「指定管理者制度の弊害」問題(於:全博協大会)

 夕方、蒸し風呂のような大阪に帰りついた。関西では大雨が降ったらしいが、豊橋ではほとんど雨に遭わずに済んだ。 まずは、昨日の全博協大会の書き残した話題から。文科省の栗原さんのお話のあとの法改正の内容に関するQ&Aで、Y先生からの問題提起とそれに対する回答。

Y:「社会教育法等の一部を改正する法律」の話だが、衆議院文部科学委員会と、参議院文教科学委員会の附帯決議で、「指定管理者制度の導入による弊害についても十分配慮し」と指摘されているが、今後どういう方向へ行くのか?


栗原:附帯決議は、(議決に際して)野党が条件(をつけるもので、今回は)民主党が中心になって(出したものだ)。(指定管理者制度については)国会が、決めたのを「弊害」という(矛盾が)露呈されている。野党からの質疑の中で、指定管理者制度の弊害については、1.保存・収集・(調査・研究)に(向かない)、2.継続性が図られなくなる、3.行政職員に博物館リテラシーが育たなくなる、という指摘がなされた。文科省としては問題を認識している(と)答弁し、改善に向けた検討をしていかなければならない(と認識しているが)、ドラスティックに変えていくことはない。(そろそろ指定管理が)切り替わる博物館が出てくる。いろんな博物館の弊害が現実のものとなってから、指定管理者制度そのものの対象の見直しが(行われると思う)。文化財がダメになった(というケースが出てきて)博物館に(指定管理者制度は)なじまない(という話になると思うが)、ここ1〜2年は、推移を見守る。指定管理者制度にも、いろいろな運用の仕方があって、もう少しきめ細かに国が示すところ、基準の中に指定管理者に対して基準を設けるということも検討(できる)。一度政府が決めた制度なので、すぐに撤廃はできない。

文化財はダメになってからでは、取り返しがつかないんですけど!! 


 ところで、野党からの質疑の中で、こういう質問は出たのだろうか?と疑問に思った。というのは、栗原さんはあちこちの講演の中で、「国会議員から博物館についての質問がない」と強調されていたので、変だなと思って、議事録をナナメ読みしてみたが、そのものズバリの箇所はまだ見つからない。

 私が今のところ見つけた国会での指定管理者制度への言及は、5月23日の衆議院文部科学委員会(会議録第11号)で、参考人として出席した長澤成次先生が、次のように述べている部分。

長い継続性だとかというものが教育の営み、特に社会教育の営みに大変求められるというところでは、私は、やはり公民館、社会教育施設指定管理者制度というのはなじまないのではないかというふうに考えておりますし、それが導入されるということは、やはり住民の学びへの影響というのも大変大きいのではないかというふうに考えております。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009616920080523011.htm

 (参議院)第169回国会 文教科学委員会(第8号 平成二十年六月三日)では、植松恵美子委員が、図書館への指定管理者制度導入について、文部科学大臣とやり取りをしている。植松委員は、

現在は、指定管理者制度は数年ごとの契約更新ですので、契約する会社が安定した長期雇用が保障されないため短期的に職員の入れ替わりによる弊害が生じているようですけれども、文科省としてはこの実態をきちっと把握されておりますでしょうか。そして、把握されているとすれば、どういった御認識を持っていらっしゃるか。また、今後どうあるべきであると考えているか、お答えください。
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0106/169/16906030061008c.html

等々、質問している。

 それと、附帯決議は、衆議院では、「自由民主党民主党・無所属クラブ、公明党及び社会民主党市民連合の四派共同提案」として提出されている。参議院では、「民主党・新緑風会・国民新・日本、自由民主党無所属の会及び公明党の各派共同提案」として提出されている。

 ダイジェストはこちら→衆議院文部科学委員会ニュース平成20.5.23 第169 回国会第11 号http://www.shugiin.go.jp/itdb_rchome.nsf/html/rchome/News/Honbun/monka16920080523011.pdf/$File/monka16920080523011.pdf

 調べるだけで疲れた〜〜

 ついでに、お役立ちサイト:
日本図書館協会「図書館法改正関係資料」http://www.jla.or.jp/tosyokanhou2008/index.html
カレントアウェアネス「社会教育法、図書館法、博物館法が改正される」http://current.ndl.go.jp/node/8042