豊橋市自然史博物館/豊橋市二川宿本陣資料館

 だいぶ日が経ってしまったが、全博協大会で回った、残り2館の話を。ただし、日にちがたつと書きづらい。ネットで関連項目などを調べだすと、さらに中途半端な感じにさいなまれる。こういうのは、やっぱり一気に書いてしまうのがいいのだろう。
 6月21日(土)、豊橋市美術博物館へ行ったあと、バスで豊橋市自然史博物館と、豊橋市二川宿本陣資料館へ回った。前日の20日に、3館の副館長さんから、レクチャーがあった。自然史博物館の松岡敬二副館長は、パワポを使って、館の説明をされた。以下は、ノートに残っているメモから。

 都市公園法に基づいた動植物公園、有料公園の中にあり、職員は13名で、うち3名が非常勤、館長も非常勤で、学芸員は7名だ。4年制大学を出て入った人は2人しかいない。ドクターをとった人は1名で、(当館の)学芸員採用は狭き門だ。
 1992年に、動植物公園の(中に入り)、博物館は入館料無料となった。来館者は、累計860万人を越え、中核都市の博物館、スタッフ13人で、これだけ人が入る館は他にない。特別展やWSをやればやるほど、入館者数増につながっている。中学生の職場体験や、博物館実習10名も、無料で受け入れている。
 展示室のリニューアルは効果があり、子どもと大人用の二段展示を行っている。カブトガニの生痕化石の展示(など、工夫を凝らしている)。
 課題としては(まだリニューアルの済んでいない)展示室のリニューアルと、収蔵庫のキャパシティが一杯なので、バックヤードの充実だ。(?年度の)事務事業評価では、1日あたりの入館者数は1700人だ。

 日本語と英語の表記が入り混じるパワポは、いかにも自然史の人という感じで、お話の内容も、聴衆がどういう人たちかということを考えれば、なんだかビミョーであった。
 豊橋市の行政評価→http://www.city.toyohashi.aichi.jp/gyouseihyouka/hyouka/matome5.html

 それで、バスで向かったときは、遠いなあ、マイカー持ってないと無理だな、と思ったが、ネットで調べてみたところ、JR二川駅から総合動植物公園まで徒歩6分とあった。公園の門を越えても、広いアスファルトの道路と並木道が続いていて、不思議な光景である。立派な公園なのだろうが、植物園とか動物園に来たという趣とは違う。
 さて、館内に入って学芸員さんの説明があり、リニューアルした中生代展示室を見た。「恐竜劇場」を“有孔スクリーン”と言われたので、すぐに高岡市万葉博物館の映像を思い出す。あれと、技法的には同じか? で、お話のあとで、その「恐竜劇場」を鑑賞した。
 “有孔スクリーン”の(ジオラマ部分の)制作過程は館のHPの展示改装日誌で見ることができる→http://www.toyohaku.gr.jp/sizensi/
 学芸員さんのお話では、今のところ、日本で最大の有孔スクリーンのようだ。今回のリニューアルを手がけたのはT社で、リニューアルしていない古い展示室はK科学のものとのこと。
 中生代展示室の二段展示はなかなかすっきりしていて好感が持てた。カブトカニ生痕化石展示は、本物の大きな化石がガラスケースの中に立ててあり、その手前の床のカーペットを化石と同じ形に切り抜き、天井から床面にカブトガニが泳いで痕ができる様子を映し出しているのだった。これも面白い展示技法だ。

 なんだかんだ、楽しんでいるうちに昼食タイムになり、他の展示室は回れないままになってしまった。帰路の会話:「立派な博物館ですね」「隠れた旭山動物園と言われているんですよ」「だって、このあたりは、他に何にもないんでしょ」とは、某先生の突っ込み。
 回れなかった展示室も見てみたいし、動物園、植物園も回ってみたかった。要は、1日、ここだけを訪れないとダメ、ということだろう。
 感想:日本は広い! こんな公園やら、博物館の存在すら知らなかった。


 さて、行き道のバスの中で聞いたお話では、豊橋市は、かつては軍都だったとのこと。第15師団の軍人さんが、遊郭に通うために市電が引かれたとか。現在は、港がトヨタ車の輸出港とのこと。
 午後からは、二川宿本陣資料館へ行った。ここでも学芸員さんと愛知大の渡辺先生が解説して下さり、楽しい時間を過ごした。本陣と、隣接する旅籠屋「清明屋」を拝見して、江戸時代の旅の様子を幾分か想像することができた。面白かったのは、資料館の2階の展示パネルで、「旅人の財布をのぞいてみよう」というもの。安政6年の日記、新井関を出て、江戸・日光に旅した吉田藩士の45日間の旅の行程と出費記録が地図上に示してある。「丸子名物とろろ汁3人分124文(1,500円)」とか書いてあって、非常に面白い。こういう歴史+地理だと、興味湧くなあと思った。いわゆる古文を読むのとはちょっと別の楽しみで、こういう江戸時代の旅行記を読んでみたいと思った。それは、松島へ行ったときにも、よく似たことを感じて、いつか、遠い、あるかないか分からない、老後の楽しみになるのだろうか。 


追記:「有孔スクリーン」で検索したら、こんな議会答弁を見つけてしまった。けっこう詳しい。以下、部分貼り付け。http://toyo.pbeins.net/cc.html(豊田一雄市議のHP)

☆教育費 自然史博物館費 「中生代展示室展示物製作委託」について
【質疑1回目】
• 今回の整備は、第4次総合計画に示されている約8億円を投じての古生代中生代の展示室及び展示物製作における、仕上げの事業ということになる。19年度までに設置された展示について拝見した限りでは、大変レベルの高い展示内容である。このような施設が豊橋市民にとってどのような意味を持つものになるのか、しっかり理解をしておく必要がある。そこで今回の委託作業の概要、リニューアルされる常設展示の主な対象、類似する施設は全国にどの程度ありその中でどのくらいに位置するものかについて伺う。
【答弁1回目要旨(主幹学芸員)】
中生代展示室の整備は、平成19・20年度にわたり約800平方米を改装するもので、展示改装費は3億3600万円で、そのうちの1億5200万円を平成20年度の予算に計上している。展示概要は、中生代展示室としてユアンモウサウルスをはじめとする8体の恐竜、エドモントサウルス(これまでアナトサウルス)展示室は実物のエドモントサウルスの全身骨格やそのミイラの全身骨格、イントロホールのティラノサウルスに変わるプシッタッコサウルスの子育て動刻などを設置するのが主なものとなる。
 豊橋自然史博物館でしか見られない生物の進化をたどる上で重要な標本や展示物を製作し、全国的にも誇れる展示に心がけており、昭和63年の開館からこれまでに850万人の方々に利用していただいている。年間平均にすると全国から40万人以上の方々の来館者がある。これらの幅広い来館者に対応するために、文字の解説だけでなく4コマ漫画もあわせた2段展示や、触れて学べるハンズオン展示、世界各地の豊富な実物標本、進化がたどれるクイズやゲーム、日本最大の有孔スクリーンを取り入れた演出ジオラマがある。このように、ユニバーサルデザインにも配慮した展示物は、子どもから大人まで幅広い階層の人たちが楽しみ・学べる内容となっている。
 日本博物館協会の平成18年3月31日現在の集計によれば、自然史系博物館は博物館全体の約5%にあたる184館がある。その内で、豊橋市自然史博物館のように地球の歴史をたどり、生物の進化が学べ、さらに地域の自然が展示された総合的な博物館は大阪市立自然史博物館神奈川県立生命の星・地球博物館など市立・県立をあわせて15館ほど。その中でも、ユニバーサルデザインに配慮した子どもから大人までの広い階層に対応した2段展示や、標本を多角的に見せる展示技法を持つ博物館は、全国の博物館の中でも数少ない存在と言える。