新しい公益法人制度について(1)

 ようやく、書く時間を確保できた。定期試験の問題作成がほぼ終わり、動物病院に犬も連れていって、ほっと一息。まだまだあれもこれもあるが、忘れないうちに。
 以下は、6月11日の館長会議で伺った、高山昌茂先生の「新しい公益法人制度について」の復習(ダイジェスト)だ。私は、会計・税務の知識は皆無に等しいので、聞き間違い、書き間違いがあると思う。間違いにお気づきの方は、ご一報下さい。訂正します。

 今回得たもの(失わなかったもの)は、1階(一般社団・財団法人)に行っても税制は今まで通り、2階(公益社団・財団法人)に行ったら税制はかなり優遇される。今まで収益事業課税だけだったので当たり前と思っているかもしれないが、株式会社と同じように全部課税される瀬戸際まで来ていたのを押し返した。反面、財務省と約束せざるを得なかったのは、会計基準の中に、税制の考え方を全面的に取り入れたことで、すごく難しくなってしまった。得たものの大きさと比べると、難しくなったのを許していただきたい。
 

 ある程度力のあるところは複雑化した新々会計基準をクリアできると思うが、専門的な人がいないところでは、大変な作業になると思う。何が大変かと言うと、「『公益法人会計基準』の運用指針」内閣府公益認定等委員会、平成20年4月11日)の19頁、すべての会計は「正味財産増減計算書」(損益計算書、1年間の成績表)の区分を3区分(公益目的事業・収益事業・法人会計)に分けて発表させる仕組みにしており、これが今回の会計基準の、もっとも大きな失ったところだ。


 会計をすることを仕訳というが、仕訳(借方、貸方の仕訳)の度に、3区分に分けないといけない。例えば、人件費、行動を3パターンに分けることができるか? 専務理事にタイムカードをつけてもらい、時間を3区分に分けることができるか、お金を支払う度に、何のために、という3区分に分ける必要がある。給料は?コピー代は? 全てのお金を支払う度に、何のためというのを合理的に決めてくださいということをお願いしている。また挙証責任は法人にある。


 2階に行った法人が3区分をすると、公益目的事業会計は全面非課税(無税)、収益事業は最高2分の1は課税だが、場合によっては、全部免税することもある、公益事業に繰り入れると考える。収益事業でお金が余ったら、公益のほうに持っていけば免税になる。公益の大切さ、そのために費用付けをしてください。税制のことが頭から抜けてしまうと、拒否反応になってしまう。


 3つの分け方をするときに、「収支相償」という考え方がある。認定等委員会が好き好んでやったわけではなくて、公益法人認定法第5条に、2階にいける法人を規定しているが、5条の中に、「公益事業目的とは、収入が費用を上回ってはいけない」、つまり赤字でないと認めない。会計の区分からして、公益事業会計でも最終的な収入と使った費用が赤字でなければいけない。赤字ということは、「縮小均衡」で小さくなっていく。これが法律5条に書かれてしまい、その当時、特許庁から来た方が抵抗してくれて、「適正な」という言葉を何とかして入れた。内閣法制局の方たちは、その言葉を最初は入れさせてはくれなかった。「収入は費用を上回ってはいけない」という文章、赤字の事業が50%以上でなければいけない・・半分以上が赤字でやりなさい、これでは、潰れてしまう。これを作った方は、公益法人というのは寄付を受けて赤字事業をするということが頭から離れないためこういう文章になったらしい。


 そこで今回、「収入が適正な費用を上回らない」という費用に「適正」という言葉がつき、この「適正」というallowanceを大切に使おうというのが今回のガイドラインの主たる目的だ。委員会の方たちと、この「適正」という意味を拡大解釈した。日本の寄付文化の難しさ、法人は寄付は基本的にできないし、個人でも、税制改革で寄付の枠は拡大したが、地方税の拡大、相続・贈与でも個人の寄付がしやすくなったが、それでも個人の寄付はなかなかこない。「適正」という言葉がなければ、2階に行った瞬間、法人は、成り立たなくなる。「イバラの2階」と言ったのは、2階へ行った法人は、認定が取り消された場合、1階に行く際に、身ぐるみ剥いで、公益的に今までためたものを、国か、地方公共団体か、公益的なところに全部寄付をして、借金は持ったまま1階に行きなさい、財産は少なくなった上、借金を持ったまま1階に行きなさいと言われても厳しい。2階に行くのは、特典は大きいが、厳しい面があることを考えていただきたい。


 「適正な」をどれだけ弾力的にするかが、公益等認定等委員会の目的になった。「適正な」という意味がどこまで拡大解釈できるか。将来イベントをするためにお金をためて、ためたお金を費用と見なす。使った費用に、ためたお金を上乗せして、収益と費用を比べて、上回りますか?ということ。お金がないと、借金してでもやらないといけない。内閣府、あるいは都道府県にできる合議制の委員会でも、絵に描いた餅では困るから、お金をためてくれないと、それを認めるのは困る。消えていくお金も費用とみなすということだが、しかし、美術館の場合、お金を投げた、そして入ってきたのが美術品だった場合、美術品は消えてなくならない。どこからお金をためる? 収益事業からためるのもいいが、公益事業からもためたい。そこで、本当に不可欠な美術品を買うなら、それも認めましょう。これもお金をためないといけない。決算書の中に、このお金、これは美術品を買います。かかったお金に、「将来のイベント」と「将来の財産の獲得」を入れて「適正な」をやっとクリアできるような形にしている。(以下、続く)

 おとつい、簿記の本を買ってきた。借方、貸方の考え方が難しい。30年前に、ちゃんとこういう勉強をしておくのだった・・・