新しい公益法人制度について(3)

 今日も館長会議の際の高山先生のご講演の続きを。私自身が会計制度をよく理解していないので、咀嚼して書くことができなくて申し訳ない。

 「『公益法人会計基準』の運用指針」(平成20年4月11日、内閣府公益認定等委員会)19頁(正味財産増減計算書内訳表)から、「収支相償」は、どうやってみるのか。公益目的事業はどうやって見るのか。実は、A事業で赤字ですか? B事業で赤字ですか? ということで、公益目的事業は全体で見るのではない。全体で見ると、A事業真っ黒、B事業真っ赤、足してちょうど、これはダメで、A事業も真っ赤、B事業も真っ赤、これが公益目的事業に該当する事業だという考え方が基本だ。それはちょっとかわいそうだから、黒字になった場合には将来イベントをするためにお金をためて下さい、ということになる。そこで赤字になったとみなす。財産は買ってはダメで、イベントだけだ。財産を見てくれるのは、「小計」のところだ。A事業赤字、B事業赤字、でも「共通」というのがあり、例えば公益事業をするので預金を持っていて、そこから金利があがる。これはA事業のためでもあり、B事業のためでもあり、これは共通的に出てきた利息だ。
 
 寄付をされました。何のため? 本当は言って欲しくないのだが、寄付する人から「公益目的事業のために使って下さい」と言われたら、公益目的事業のための寄付。さらに最悪なのは、「A事業のため」と言われたら、また使わないといけないのだが、できればそれはなしにしてもらって、「公益目的事業のために使って下さい」と寄付を貰えばここで言うところの「共通」に入ってくる。そこに入れ込んで、「A事業」と「B事業」と「共通」を足し込んだのが「小計」。小計の「収入」と小計の「費用」を比べて赤字かどうか、赤字でない場合は、将来のイベントに足し込んでもいい(すでに公表された別の表がある)。あるいは、将来の資産を買いたい、この美術品を買いたいと言ってもいいですよ、というのが初めて「小計」に出てくる。


 タチの悪いのは、20頁のところの「他会計振替額」という曲者だ。他の会計から持ってくるのは何か? 収益事業の方から余ったものを公益事業の方に持っていく。どれだけ余ったかと言えば、最低50%、これが「共通」の欄に入ってくる、収入だから。収益で儲けた、最低の50%は収益事業のところから、公益事業の収入のところに入れる。最後の大物の収益事業からの寄付が50%以上来てしまうので、それも入れた上での赤字だ。何しろ、最後は赤字にならなければいけない。この持っていき方も、必要なら50%以上も認められる。必要なら50%以上も認めることで、収益事業と書いてあるところは、課税される。


 19頁の「収益事業等小会計」と書いているところ、この「等」が「共益」だ。だから「a事業」「b事業」「共通」「小計」と書いてあるところだが、作るときには、税務上の「収益事業」と「共益」、公益、共益どっちが多いかというと、特定多数のためのことが「共益」で、不特定多数が「公益」。そうすると共益的なもの、これは税金かからない。「収益」と「共益」を分けて、収益事業のところに課税させる。だからこの内訳表は、税金計算をしている。税金計算させるための表でもある。会計にこれだけ税務が入り込む例はあまりなかったのだが、そういうふうに計算させる。そうすると、仮に「a事業」を「収益」と考えて、「b事業」を「共益」と考えると、「a事業」を赤字にするためには、利益が出れば税金がかかるので、税金がかからないようにするには、「a事業」のところの、20頁の振替の時に、「全額振替」にすれば、初めて無税。ここでいくらか利益が残れば課税。そのように使ってくださいという表だ。あまり聞くと、みなさん頭に来る。そこでもう一回戻ると、得たものと失ったもの、得たものは場合によっては無税だから、それを思わないとやれない、税制のことを考えると、怒りが爆発するかもしれない。それが怖いので、事あるごとに、申し上げている。


 でも、今言ったような形が分かっていれば、こうすれば無税にもなるし、クリアしていくことができる。赤字にするためにどうしたらいいかというと、収入を下げる(これも一法だが)、いろんな入場料とかを下げる、それか事業を増やす、それも赤字になる。そして、収益事業で稼いで、あとは、寄付を受けるという仕組みになっている。寄付の受け方を注意していただかないといけないが、全体に来た場合には法人会計の中に寄付が入る可能性もある。あるいは、特定のために使って下さいというのは、共益に入るかもしれない。あるいは、寄付は公益に入ってくるはずだが、公益のために使ってください、というのは公益。


 会費も同じ。会員の会費も明確に分けてください。会費収入も3区分ですから、公益のための会費なのか。普通は共益の中に入る、社員が法人に出すというのは、共益的な、特定の人のために出す。場合によっては、収益の事業に資するためになどと書かれていると税金がかかってしまう。


 だから定款の作り方がすごく難しい。定款をどうと来るか、作り方によっては、2階に行くための足かせになる。たぶん各主務官庁が、モデル定款を作ってくると思う。ただ、モデル定款を、今のような考え方を知らないで作られてしまうとあとあと困ることになるので、どこに入るかを考えながら、定款を作ってほしい。今のが「収支相償」の話だ。(以下続く)