新しい公益法人制度について(4)

 高山先生のご講演の続きを。なお、【】内や出典等は適宜、瀧端が補っている。

 次に、「公益目的事業比率」の話をする前に、では公益目的事業とは何か?という話がある。公益法人認定法第2条4号に、こういう事業は公益目的事業ということで、22事業プラス包括ということだが、23事業の公益目的事業について書いてある。


 『公益認定等に関する運用について(公益認定ガイドライン)』(平成20年4月11日、内閣府公益認定等委員会)の53頁に、そもそも3区分、「公益目的事業」、「収益事業等」、「法人」と分ける、公益目的事業とは何かという話からすると、A【公益法人認定法別表(第2条関係):個々の事業が別表各号のいずれに該当しているかを検討】とB【個々の事業が特定多数の者のみの利益の増進になってないかどうかの観点からチェックポイントに沿って検討】をクリアしたものが公益目的事業であるということになる。


 一つが、認定法第2条4号の別表で書いてある23事業、このAについて。実は、どれかに小指がひっかからない法人、それは存在してはいけない法人で、全法人、必ずどこかに入るようになっていた。このままでは全ての法人が2階に来てしまうので、それは困るということで、Bのところ、不特定かつ多数、共益は特定、公益は不特定、この切り口でいこうということになった。今までどういう公益法人が収益事業をやっているのか、どういうふうに括っているのか見ながら、その辺の考え方も色濃く出ている。


 だから、そのBの部分の一覧が、54頁で、17のカテゴリーを例示で上げてある。17の中に事業が入り込む可能性があるかということだ。10番に「博物館等の展示」があり、「博物館等の展示」をしていれば、これは公益目的事業のうちの公益性、即ち不特定多数の部分をクリアするだろうということになった。実は喧々諤々とやった中で、博物館の公益の中に趣味の世界があるのではないか、という話が出た。そこで出た例が、チョウチョを収集する法人を認めていいかという話が出た。最終的には、認めましょうという話になっている。最初は、共益と公益をかなり、特定というところから攻めて、不特定という話になったが、やってみると、この区分はできない、難しい。特定だけどものすごい人数がいる場合と、不特定だけどほとんどいないというのをどちらを助けようかという話になった。それで、この区分はなしにしようということで、「博物館等の展示」という10番を入れ込んだ。そこでは、趣味の世界とかそういうものは関係ないが、チェックポイントを出した。そのページ数が、43頁、3つ「公益」、「収益」分けた、公益の中に入れて、公益でなければ、収益あるいは共益に行ってしまう。

ここでいう「博物館等の展示」は、歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集・保管し、展示を行う事業のことである。
法人の事業名としては、○○館、コレクション、常設展示、企画展等としている。
公益目的事業としての「博物館等の展示」は、歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料に直接接する機会を不特定多数の者に与えることを趣旨としている必要がある。
したがって、テーマを適切に定めるとともに、展示内容にそのテーマを反映させているか、一定の質が確保されているか等に着目して事実認定するのが有効であると考えられる。【43-44頁】

ということで、先ほど言ったような串刺しはやめて、この範囲、即ちこの4つのチェックポイント【44頁】でいく。


 公益認定等委員会に出す資料がすでに発表されているが、Vr.1の中では、まず、【公益法人認定法 別表(第二条関係)の】23【事業の種類】のどこに当てはまるかを書く欄がある。その下に17の事業区分を書き、さらにその横にチェックポイントで4つ挙がっていて、この4つにどのように反映させるかを書かせる。基本的には作文のうまいところだけが行くのではない、たとえ、表現力がうまくない法人だったとしても救うという意味でこの4つを出している。


 一つが、「当該博物館等の展示が不特定多数の者の利益の増進に寄与することを主たる目的として位置付け、適当な方法で明らかにしているか」という定款だ。定款にしっかりと、自分たちは博物館をやりますと書いて、何らかの方法でパンフレット等に出して下さい、あとで内閣府が検証する。


 二つ目、「公益目的として設定されたテーマを実現するプログラムになっているか。(例:テーマに沿った展示内容/出展者にはテーマに沿った展示を厳守させている/テーマで謳っている公益目的とは異なり、業界団体の販売促進や共同宣伝になっていないか)」、ここに書いてあるような展示について、業界団体の販売促進や共同宣伝になっていないか、スポンサーが入って来た部分等どうするのか、総合的に判断するので、これが一つの例として上がっている。


 三つ目、学芸員がいるから大丈夫だと思うが、「資料の収集・展示について専門家が関与しているか」、資料の収集展示について専門家がきちんと関与しているかどうか、これは見ていく。だから、専門家を雇っていないところは、これから大変だ。きちんと揃えて下さいということが書いてある。


 四つ目、「展示の公開がほとんど行われず、休眠化していないか」、これは、相続税逃れのために、コレクションを渡す。貰うときに今回は不出だというのは困る。コレクションを貰ったとしても展示をして下さい。そういうことがマル4で書かれている。これをクリアしたら、公益目的事業に認定される。認定されたら赤字だから大変だが、でも、赤字で頑張って下さい。


 だから、博物館はどうなりますかと聞かれた時に、まず博物館は大丈夫ですということを申しあげたい。もう一つよく質問があるのが、「公益目的事業、分かりました。でも私たち、博物館持っていません」。即ち、2003年から地方自治法が変わって、指定管理者制度が導入されて、建物は地方が持っていて、それを指定管理者制度で、公益法人が運営しているところが良くある。当初、これはダメだった。即ち、競争入札するような場合には、株式会社も入り、NPOも入ってくる。こういう中で、公益法人として認定する必要があるかという議論があった。ところが、すったもんだの中で、指定管理者だからといって排除するものではない、やはり内容を見ようということで、内容が公益に資するもの、価格もある、要は儲からないところは民間が来ないから、赤字ですから、そんなところに本当に来るの?というところからすると、まず価格が安く設定されている、収入がかなり安く設定されているというところで見ると、これはクリアできることになっているはずだ。従って、指定管理者だからといって、排除するのではなくてやっている内容を見て、いいことをやっていれば、2階に上がれるということを考えている。


 また、ただし中を見ると、実は売店もやっていますというと、さすがに売店は公益目的事業ではない。恐ろしいことに、収益は、収益を上げ続けないといけない。申請のところに、必ず黒字になっているかという欄があって、売店やっています、赤字です。これは絶対ダメです、できません。売店は公益目的事業にならないし、かと言って売店が赤字になっていると、もともと、売店から公益目的事業へ寄付をするということを考えているから、売店が足を引っ張るのは何事だ、ということでこれはできない。そういう事業は一時的にあるとしても、長期的に黒字体質でない売店は運営できない。そういう整理に今回はなっている。


 決して儲かっているだけではなくて、サービスの一環として売店や喫茶店をやっているのだと思うが、作り方がそうなってしまったので、場合によっては、そこの部分だけ切り離すとか、そういう必要があるのかもしれない。そこの部分だけ貸す、施設の貸与は認められているので、賃料だけ貰えば必ず黒字になる。でも事業、本当に大丈夫かなというのがあって、結構これは苦しい点かと思う。


 公益目的事業というものは、そういうチェックポイント、そして今の17、本当に17の中に入りませんというのがあると思う。この17は、一生懸命に考えた中でだいたいが助かるだろうという17区分だが、この17以外はダメかと言うと、そんなことはない。この17の趣旨、チェックポイントのマル1は、他の頁にも必ず書かれていて、即ち、“不特定多数の者の利益の増進に寄与するようになっているか”、調査研究であったとしても、こじんまりしたところでしか発表していなくても、それをHPに貼り付けて皆がアクセスできるようになっているか、これが公益目的。要はどれだけ外にオープンになっているか、たった数十冊しか調査研究書出しません、あるいは国からの受託で調査研究しました。国に対してしか報告はしていませんという時に、国の方で公開してくれなければ、自分たちで公開すればよい。守秘義務はどうなるか分からないが。自分たちで公開すればそれは学術の増進になっているから、そういうこともある。

 
 17のところ、これしかないと思わないで下さい、組み合わせで構わない。全体の博物館の中で、調査研究とか展示とかの分け方ではなくて、もうちょっと違うふうに、横断的に教育から展示から調査報告から一体ですよ、というのは、これOKです。だから大きく括ることも可能だが、括り方が行き過ぎたら、え?と言われる。即ち、大黒字と大赤字の抱き合わせでは困るが、そういうような意図でない中で、横断的に括るのは可能にしようということになっている。


 全体的な流れとしては、38頁に書いてあるように、17の事業ごとだけど、こうじゃないものでもいいんですよ、ということが書いてあるし、さらに48頁に、もしも区分にないものでも、マル1とマル2をクリアして下さい、と書いてある。申請するときに作文力を問われるのは、この17の区分にどうしても当てはまらないときだ。


 これだけクリアにした中でも、まだ裁量があるのではないかと疑われると思うが、それは甘んじて受けないといけないが、17の区分に当てはまらない18番目の部分だけは、裁量がどうしても入ってしまう。かなり考えた中で外れてくるので、17の区分に当てはまらない部分は、どうしても裁量が入ってしまう。このことは、あらかじめ申し上げなければならない。(以下、続く)

 内閣府公益等認定委員会のHPに、上記Ver.1と思われるものが掲載されている。→http://www.cao.go.jp/picc/seisaku/sinsei/sinsei.html(たぶん、これのことかと思う)「公益移行申請書」の中の別紙2「事業一覧・個別事業(6月13日版)(PDF)を開けてみると、下▼ボタンを押すと、区分ごとのチェックポイントが現れる(予定?)になっている。全体の注意書きに、「なお、申請書(様式)や手引きは、新制度施行前ではありますが、法人における移行検討の便宜を考慮して、できる限り早い時期に公表することを目指した、いわば「第1版」であります。したがって、現時点においてはとりあえずPDF形式で公表させていただくこととし、今後、電子申請システムの構築に伴い、ファイル形式を整えていきます」と書かれているので、▼ボタンはまだ稼働していないのだろう。

 ところで、昨晩、検索していたら、こんなものを見つけた。申し込み期間を過ぎているので、もはや消されてしまったらしく、キャッシュ。
 内容は、文化庁の、「美術館・歴史博物館に対する新公益法人制度に関する説明会の開催について」という案内文。7月14日開催らしいが、6月27日が締め切りだった。こういうときは、透明人間にでもなりたいものだ。
 「文化庁では,民法第34条の法人が設置・運営する美術館又は歴史博物館を対象として」とあるので、他の館種向けに、文科省も同様の説明会を企画するのであろうか??