ルイジアナ美術館(8月24日)

 8月24日(日)、9:21、コペンハーゲン中央駅発ヘルシンオア行き列車で、フムレベック下車。ルイジアナ美術館(Louisiana Museum for Moderne Kunst)は、ガイドブックには10時開館と書いてあるが、行ってみると11時開館だった。フムレベック駅周辺は、赤レンガの建物が立ち並び、たいへんおしゃれ。徒歩15分程度だが、途中、シンプルだがしゃれた個人住宅(サマーハウスだろうか)が立ち並び、中には現代風茅葺の家もあり、見ていて飽きない。

 私同様に、開館時間を知らずに来た人もちらほら。時間潰しに、海に向かって歩く。急な斜面の遊歩道を降りていくと、そこはすぐ海。小石の浜で、小さな桟橋から、水着で海に入る人がいてびっくり。昨日の寒さからは考えられないが、今日はいいお天気。カヌーで海に漕ぎ出していく人々。ハマナスの大きな赤い実がたくさん。ルイジアナ美術館を海岸から見上げる。海岸を進んでいくと、小さなヨットハーバーがあった。

 丘の上には、サマーハウス(?)が広がっていて、りんごの木から、実がいっぱい芝生の上に転がっていたりする。
 11時前、美術館に戻る。大勢の人が開館を待っている。やがて開館。友の会会員は入り口が別になっているが、そちらから入る人が多い。メンバーには、ショップやカフェの割引がある。
 展示でダントツ面白かったのは、PETER FISCHLI & DAVID WEISS(スイス)の“The Way Things Go”(1985−87)という長い映像作品。大掛かりなドミノ倒しの作品だが、工場跡のようなところで、ばっちいの&危ない系の素材を延々と写している。ゴミ袋を膨らませたのや、タイヤ、火花が散って、液が流れて、靴が歩いて、ドライアイスがもくもく・・・と、笑える作品で、一番人気だった。子どもたちも楽しんでいる。そこにときどき、ごーん、と鐘が鳴ってびっくり。これは、DENNIS OPPENHEIM(USA)の“Attempt to Raise Hell”(1974)という作品。鐘が揺れて、時々、その下に座っている男性の額を直撃して音が鳴る。展示室の中で笑いが絶えない。
 他に印象的だったのは、ジム・ダインの“White Bathroom”(1962)、これは、鏡やバスタオルや歯ブラシなんかを貼り付けた作品。カップルが見て笑っている。作品と来館者の距離が近いのは、日本の美術館とは大違い。ベビーカーの子も多く、老若男女問わずに楽しんでいて、明るく賑やか。

 展示室は、ガラス張りの回廊で結ばれていて、海がすぐそこだが、回廊のあちこちから庭園に出ることができる。作品が展示されている場所でも、ガラス戸が開いている。外は、西側は海に続く広々とした芝生。東側は湖のある散策路。もちろん、戸外に彫刻作品。

 カフェは、海を見下ろすオープンカフェ。対岸は、スウェーデン。白い帆を張ったヨットが通り過ぎる。天気は快晴。お昼から思わずビール(ジュースと値段変わらないし)。
 子どもたちがたくさん。斜面の芝生を転がったり、思い思いの場所で海を眺めたり、彫刻を触ったり。

 ルイジアナ美術館のことは、ダニエル・ジロディ/アンリ・ブイレ(松岡智子訳)『美術館とは何か』で知って、長い間、授業ネタに使っていた。片側は海、片側は湖に面して回廊で結ばれた美術館って、どんなんだろうと、ずっと思っていた。実際に行けるんだ、と自覚したのは、この頃。想像の中では、平坦な場所と思っていたが、海岸からは、かなり高いところに建っている。湖のほうは、池という感じだが、こちらも、斜面の下にある。美術館の建物が、小高い丘の上に建っている。

 これだけ、人々に愛されている美術館って、少ないのではないだろうか。匹敵するのは、ウォーカー・アートセンターと、ポンピドゥー・センターくらいか。景色が素晴らしすぎて、作品より、つい海と庭園を見てしまう。