ムンク美術館(Munch-museet)(8月28日)

 この日は、朝、オスロ駅でベルゲン急行の指定を予約して、フロム鉄道の割引チケットを購入した。ガイドブック(地球の歩き方)には、フィヨルド・ツアーズの周遊券「ナットシェル」には、「フェリーやバスの料金と列車の予約のみでも受け付けてくれるので、ユーレイルパスなど、鉄道パス所有者でも無駄なく利用できる」「鉄道駅で購入できる」と書いてあるので、ノルウェー国鉄(NSB)の窓口で一式、手配しようと思ったところ、NBSで出せるのは、ベルゲン急行の指定とフロム鉄道のチケットだけだという。バスやフェリーは、現地で買ってくれとのこと。まあ、たぶん予約がなくても、行けば乗れるだろう(去年のベルニナ急行線から想像がつく。要予約と紹介されている人気バス路線でも、当日朝、チケットを購入している人を目撃したから)。
 ユーレイルパスの日本語ガイドパンフには、フロム鉄道は30%割引と書いてあるが、実際には、28%だった。「30%・・・」とパンフを見せても、日本語では詮無いことだ。ベルゲン急行は、行き返りとも窓側(行きは、進行方向左側が、U字谷を堪能できる)を確保、フロム鉄道は、座席の指定はなかった。

 さて、地下鉄に乗って、ムンク美術館へ出掛ける。オスロの地下鉄はTマーク。オスロ中央駅から2駅目がムンク美術館のあるToYen(oはスラッシュo)。

地下鉄の駅を上がると、すぐアパートと公園で、公園沿いに歩いていくと、すぐにムンク美術館。10時開館までまだ少し間があり、適当にそこらに座って待つ。

 オープンすると、ものものしいセキュリティー・チェックがある。荷物も機械でチェック。あとで日本語版の解説書を買って読んだところ、「2004年8月22日、武装した二人の覆面強盗が博物館に乱入して警備員と見学者を脅し、博物館が所蔵する最も重要な作品の二点、『叫び』と『マドンナ』が盗まれた」とあった。覆面強盗だったのか・・・。1988年にも、壁を壊して、『ヴァンパイア』が盗まれたのだそうだ。
 ちなみにこの本(『ムンク オスロ ムンク博物館』1998年)には、こんな面白いことも書いてあった。

 オスロ市がムンクの遺贈を受けて以来現在に至るまで、ムンク博物館は、ムンクの芸術を広く一般に理解促進することに努力を傾けている。ムンク博物館のコレクションをもとに、ノルウェー国内と海外において非常に多くの展覧会を開催してきた。これもまた、コレクションの金銭的な価値を高めることに貢献しており、その価値は1944年の数百ノルウェークローネから、現在では数百億クローネとなっている。(12頁)

 積極的に作品を外に出すことで、知名度とファンを増やし、それが作品の価値を高めるというのは、言われてみればなるほどだ。

 さて、ゲートを入ると、最初に修復の様子を映像で映し出した部屋(DOCUMENTARY EXHIBITION)があった。出光が出資した修復プロジェクトのドキュメントなど。あとでもう一度見ようと思って、先を急いだのが間違いだった。展示室に入る前に、もう一つ、ゲートがあって、それをくぐってしまうと後戻りできないシステムのようだった。もう一つ、失敗したのは、展示室の前に、“LECTURE HALL”があったことに気づかなかったこと。このホールに、「太陽」と「研究者たち」が展示されていたらしい・・・しかし、扉開いていたかな??まあ、予習不足だったということ。
 展示室の中で、興味を引かれたのは「星空」という作品。あとは、見れば見るほど、この人変だよな・・・という気がするのだが、石版画の「ブローチ/イーヴァ・マドッシ」(1903)は文句なしに、きれいだと思った。
 ショップで、色々本を物色したが、上記日本語版に、浜辺で、黒いふんどし姿で絵筆を握っているムンクの写真があった。この人はこういう人だったのかと思って、さらに別の本(“LIVSKRAFT”2006)を見ていると、ムンクヌーディストだったのではないか・・・ポーズを取ったセルフポートレートとか、男性裸体写真&絵のオンパレード。雪に囲まれたサウナ小屋の前でバスタオルを巻いてポーズを取る6人のおじさんとか、一番笑えるのは、「SOLDATERIV.GARDERMOEN ARTILLERIET GYMNASTIK」という1904年の写真。これは着衣だが、ギムナジウムの学生と思しき男性陣が、教官の前で左手挙げて〜!のポーズをとってる写真。いや、笑っていいんだろうか。本の後半も、まる裸で健康体操。こういうの、ドイツであったよね、という・・・。全部ノルウェー語で書かれているので、残念ながら、よく分からない。そもそも、こんな写真の本、日本では市販可能なんだろうか。日本語のムンクの本に、こういう話は出てくるんだろうか。兵庫県美では図録を買わなかったが。という訳で、ますます謎が深まったムンク