(ノルウェー)国立美術館(Nasjonalgalleriet)(8月27日)

 8月26日は、結局、ストックホルム近代美術館でもう疲れてしまって、(スウェーデン国立美術館には寄らずに帰ってしまった。27日(水)は、ストックホルムからオスロへの移動日。
 8:30ストックホルム中央駅発、14:36オスロ中央駅着、625(←列車番号)。ストックホルムオスロ間の直行列車は日に3本しかなく、他には夜行が1本と、夜9時過ぎにオスロに着くものしかない。国際線なので、カッコいい車両を期待していたが、やって来たのは、古びた2ndクラスだけの列車だった。乗客もまばら。X2000で、もう一度ルンドまで戻るのは退屈だったので、内陸部を行く路線を選んだのだが、あまり使われていない様子だ。首都間移動は、飛行機が主流なのだろうか。
 座席は、座ったとたん、ガクッと音がして、シートが沈む。最初のうちはがっかりしたが、ほどよい込み具合(たまに人がいるくらい)で、何より静かで、実は今回の旅行で一番快適な長距離路線だった。というのは、ドイツとか北欧の人たちは、電車の中でうるさいのが基本だからだ。携帯で平気で喋るし、若い子などは、音楽をそのまま鳴らしている。おしゃべりもすごい。携帯鳴りまくりは、1stクラスでも同じ。ゴミもほったらかしの人が多い。靴はいたまま、向かい側の座席に足掛けるし(向こうの人には、はじめから、靴を脱ぐという発想がないのだろう。日本のほうが、特殊)。とにかく、そういうことを気にしなくていいほど、この路線は静かで、おまけに、人はどんどん降りていく。Hallsberg駅から食堂車が営業開始というアナウンスが入る。車内販売がないのが残念。
 コケに覆われた林と、時々、湖。北欧諸国はコケファンにはたまらないだろうなと思う。12:49、Norwayというアナウンスが入る。14:10頃、湖が現れ、家が点在し始める。定刻、オスロ中央駅着。オスロ中央駅の郵便局に寄って、荷物を送る。国際便用の包装パックは1種類しかなく、最初に送り先を言って、代金を払うシステムだった。詰めたら、あの籠に入れなさいと言われ、複写伝票を渡される。郵便局の中で荷造りをして、伝票を書いて、「ここに入れなさいって、預かり票とかどうするのかなあ」と不安。籠に入れて、しばらく見ていたが、このまま帰るのは、あまりに不安なので、籠の横のお兄さんに、これでいいの?と尋ねると、伝票の間から控えの票を1枚、抜き取ってくれた。つまり、セルフサービスって、伝票の預かり票も自分で抜きなさいということだったのか。こんな国は初めて。
 オスロ中央駅の前は、おおがかりな工事をしていた。1日交通券(Dagskort)を買って、トラムでホテルのあるProf.Ascketehougs Plass下車。その一駅先に国立美術館があった。トラムの一駅は目と鼻の先で、荷物を置いて歩いて行った。

 (ノルウェー)国立美術館は入館無料、入り口に何人かガードマンさんがいる程度。有名なのは、ムンクの部屋(第24室)。「マドンナ」も「叫び」も、翌日行ったムンク美術館と同じ名前の作品がある。この2点だけは、ガラスの覆いがしてある。たまたま、今年の2月に兵庫県立美術館で岡本主査によるムンクの解説(及びスライド)と特別展を見ていたので、幸か不幸か、既視感が漂う。スライドで先に見てしまうということの功罪を考える。でも、あのときに見たスライドがきっかけで、ムンクを見てみたいと思ったのは確かである。私が興味を持ったのは、「太陽」とか「歴史」とかの、どこか愛国的な、岡本先生の言葉を借りれば「国を代表する画家として自他ともに認めていく」時期の作品なのだが。
 国立博物館で、私が勝手に抱く「北欧的な」イメージのある作品は、というと、Gerhard Muntheの6枚組みの作品とTheodor Kittelsenの作品。検索してみると、ノルウェー大使館のページがヒットした。Gerhard Muntheは「民族主義作家」、Theodor Kittelsenは「新民族派」なのだそうだ。
 古い時代の作品を展示した部屋があって、大天使ガブリエルが、聖母マリアに受胎を告げに来るモチーフの絵(Barent van Orleyの“Bebudelsen”(ca.1518))があって、感激した。その部屋の一番奥には、グレコの“Den angrende Peter”という作品が飾ってあって、その右手には、“An Evangelist”(おお!これも勉強したところではないか!)、左手には、“Portrait of a Musician”(ca.1516−1560)という木彫の作品があった。この壁面が、まさに祭壇のようになっているのだ。
 アークエンジェルエバンゲリオンならぬエバンジェリストを見たことで、すっかり満足して宿に帰った。

 【しばらく学会発表モードに切り替えていたら、急速に北欧の記憶が消えていることに気づいて、愕然。まあ、お鍋焦がすぐらいだから、万事に亘って、大概のことは忘れてしまうようだ。】