地震展(大阪市立自然史博物館)

 入試業務がお昼過ぎに済んだので、1時のスクールバスに飛び乗って、長居公園まで行った。地震展・・・地学の展示だから難しいだろうとか、パネルに字がまたいっぱいなんだろうとか思いながら出掛けたが、予想外に面白かった。
 まず、「有馬―高槻構造線活断層」の剥ぎ取り標本。採取地は「安威」と書いてあるではないか(←うちの職場の所在地)。おまけに、私の住んでるのは、高槻。断層があるとは聞いていたが・・・。で、床に大きな断層マーク入り地質図が、ビニールコーティング(?)されて貼ってある。自宅所在地附近を眺めるが、オレンジ色に塗ってあるのは分かるが、細かいところがよく見えない。この地図の上に乗って探せると(琵琶博で一世を風靡した航空写真みたいに)、みんな自分の住んでる場所を探して盛り上がるだろうに、と残念。上に乗ってはダメとは、どこにも書いていないけど。
 子ども向けの説明用に作られた剥ぎ取り標本の見本とパネルで、断層履歴を説明したコーナーは、分かりやすい。私のような理系オンチにも、2回ずれたのが、ズレの大きさを比較することで分かるよ、というのは、ほぼ理解できた。土器(植木鉢?)の破片が、模造剥ぎ取りにも入れてあるところが笑える。
 一番感激したのが、大きな南海トラフ立体視ができるコーナー。床に貼られた地図だけでは、何かさっぱり分からなかったが、青、赤のセロファンが張ってある紙メガネ越しに見ると、見事に南海トラフがぐっと、堀り下がった。潮岬の直下から、四国の南岸まで、ど〜んと深い溝になっている。これは、立体でないと、実感が沸かない。立体視って、こんなすごいものなのか!とひそかに感激した。(私は学生時代、立体視が大の苦手だった。当時、地理の学生だったので、立体視はできて当たり前と思われていたが、何の練習もしないうちから、出来て当たり前とされてしまうので、そういうしょうもないことの積み重ねで、どんどん劣等感を溜め込んでいた。今日は、あまりに簡単に立体視が出来てしまったので・・・)
 他に興味深かったのは、「地震動による大根、白菜の抜け上がり」の写真、本当にこういうことが起こるんだなあ、と。ボーリングコアが3本、木製の箱にきちっと並んだ実物を見るのも、たぶん初めて。その左横だったか、細長い剥ぎ取り標本(確か)に、ところどころ、アルミホイルが入っていて、「アルミホイルは、資料採取の折に入ったもので、初めから地層に入っていたものではありません」みたいな説明があったのが、妙に気になった。なんで、アルミホイルが入ったのかな?
 映像資料は、それぞれインパクトがあった。特に、津波の記録映像。高知県須崎市の観光漁港を襲った津波の動画(1960年)、この時代にカラーの映像があることに驚いた(ベースは白黒に見えるが、1箇所、肌色の人が横切る箇所がある)。いや、津波の直前に、ぐっと、波が引いていく様子が不気味。他にも、液状化現象の映像など。
 映像はそれぞれ、見ごたえがあり、何分かかるかも明記してあるのがいいのだが、もう少し椅子がほしいところ。来館者は、今日のような平日の昼間は、中高年層中心で、館内もゆったりしているから、小さな折りたたみ椅子などを貸し出してくれると、嬉しい。椅子を準備する費用がないなら、ビールケースでもいいけど。
 地震考古学の展示で、杭がボキッと折れた地層(と、年代は現在検討中、とかの正直なキャプションも)面白かった。1944年の東南海地震の新聞記事、戦時下で厳しい報道管制が敷かれていたことや、同じ新聞紙面で、制服姿でピンポンをしている人物の写真など、珍しいものを眺めた。古い文献資料を使った地震研究も含め、地震研究のさまざまな切り口が展示されていた。この文献コーナーのみが撮影禁止とされていて、デジカメを持って来なかったことを後悔した。
 終わりの方に、防災グッズの展示。カップ麺が2個、う〜ん、お湯はあるのかな・・・。ラップがあるのが意外。お皿にかぶせれば、洗わずに使えると書いてあるが、そういうシチュエーションで、お皿を使って食べようと思うかな? しかし、三角巾や紐(ロープだったかな?)代わりにも使えます、というのは、目から鱗。しかし、大きくてかさばるのが難か。
 その横に、すわり心地のよい長椅子とセットで、お約束のビデオ。今回は内閣府制作の「10秒間で何が出来る?」ビデオ。地震警報が鳴ったら、薬缶の火を消して、机の下に潜って、と。そのあと、火の近くにいたら、消したらいいけど、遠くから駆けつけて火傷をするといけない・・・みたいな、どっちやねん??(帰路、解説書を読んだら、今のコンロは自動的に火が消える、と書いてあった) 地下街で地震にあったら、出口へ殺到してはいけない、というのは、なるほどなあと思った。
 と、その時、背後で、女の人が倒れた気配。二人連れの女性のうち、一人が、気を失って、展示室で床に尻餅をついたらしい。私の椅子の後ろの席に、横たわった。彼女は、気を失ったのは初めてのようで、びっくりされたようだ。お友達が、慌てて、階下の喫茶コーナーからコップに水を貰って帰ってきた。その間、横になった女性と、貧血ではないかとか、少しお話し。頭を打たずによかったことだ。・・・座れる場所をたくさん、作りましょう。
 受付の外には、「ここはタダちゃうの? 何があるの?」と2人連れの男性。「展示がございます」と受付の女性。「体験はないの? 揺れるの、なんや、体験はないんか」と帰って行かれた。起震車が来る日(これはタダのはず)を教えてあげたらいいのにと後から思った。こういう防災型の展示は、誰の目から見ても公益性がはっきりしているのだから、本来は入場無料にすべきだろう。
 さて、帰路、解説書を読んだら、展示室内のパネルとは、微妙に違う点にいくつか気づいた。火を消しに走るか、もそうだが、心配の「有馬―高槻構造線活断層」も、解説書には、活動の間隔が書かれていて、今後30年間に地震が起こる確率は、0〜0.02%と推定されていると書かれていた。展示室では気づかなくて、心配していた。活断層の履歴の読み方は、展示室の説明のほうがとっつきやすい。
 全部を理解できたわけではもちろんないけど、地震研究のさまざまなアプローチを知ることができて、とても有意義だった。これはおせじではない。大阪市立自然史博物館でこれまでに見た特別展の中で、一番当たりだったかもしれない。