全国博物館大会(3)

 続いて佐々木秀彦さんの「問題提起 『日博協の望ましい姿』とは―創立80周年・新公益法人への移行を迎えて―」のダイジェストを。ちなみに、佐々木さんの資料(レジュメ)は刺激的で、レジュメに沿った詳しいご意見が伺えるものと期待していたが、時間の関係もあってか、お話は前振りで終わってしまったのが残念。ただ、その前振りも、色々と連想ゲームを誘うもので、個人的には興味深かった。

嶋崎(司会):「協会に入るための魅力」は公益認定を受けるための前提条件だ。

佐々木:常務委員会が組織されて3年目になる。メンバーは東京が中心だが、メールで参加されている方も3〜4名おられ、たばこと塩の博物館の半田さんや、琵琶湖の布谷さんもメンバーだ。協会運営を傍らで見た立場から(お話ししたい)。
 江戸博に(最初入った頃)、日博協は文科省の外郭団体?と思っていた。ところが、日博協の事務局は、文科省のビルの裏手の地下2階の窓のない一室で、3〜4名の事務局員が忙しく立ち働いているだけだった。資料に、国内外の(類縁団体の)比較を載せている。後に日博協の専務理事も務められた棚橋さんが、日本の博物館はバラバラではなく結集しようと協会を作られ、混乱の時期もあって、一時は棚橋家が事務局を引き受け(て、家族で)『博物館研究』の発送作業をされていた時期もあったようだ。
 日博協に求められる役割としては、加盟館のメリットが問われる。協会に力を結集する(必要性は)ますます高まっている。これは、指定管理者制度や、国立館の市場化テスト、新公益法人制度など、時代の曲がり角にあり、既存の枠組みの中でやっていくことは難しい。ミュージアム全体でメッセージを発しないといけない。
 (このように思うようになった)きっかけは、法改正だ。検討協力者会議の一員として加わったが、中川さんを主査として抜本的な改革をめざして登録制度の見直しを(進めようとしたが)、なかなか通らない。国は、地方分権規制緩和(と言って)、国の役割をミニマムにしようとしている。昔は国にお願いをして、だったが、これを転換しなければならない。国は、当事者で考えてやってはどうか、当事者の力を結集して、というが、これが協力者会議で身に沁みた。社会にどう貢献できるか、メッセージを発する場が必要だ。
 論点としては、1.日博協の館種横断の強みをどう生かすか? 美術館関係者からは、全国美術館会議美術館連絡協議会に入っているからいいじゃないかと、敢えて日博協に入る理由が問われる。折り合いをどうつけるか?
 2.個人会員をどう考えるか? 個人会員は現在65名で、ほとんどが団体会員だ。これは社団法人時代の名残(かもしれないが)、(現場の学芸員が)日博協を知らないことの現われだ。職員の意識と協会が結びつかない。個人会員の層を厚くする?
 3.現場の声をどう反映させるか?
 今回は、見直しの絶好のチャンスだ。紺屋の白袴だが、「日博協の望ましい姿」を出していない。日博協の使命・ミッション、改めて見直す(必要がある)。

 大筋はこういうお話だったと思う。レジュメで面白いと思った問題提起は、「日博協は新制度への移行にどう対応すべきか? 公益財団法人? 一般財団法人? NPO法人? 任意団体?」の部分。ここについての佐々木さんのご意見を伺いたかったのだが。個人的には、公益財団法人を目指すという選択肢はやめたほうがいいと思う。昨日も、高山先生の「新公益法人制度への移行と博物館」のご講演を伺ったが、公益財団法人へ移行し、維持していくことの大変さを考えたら、現在の日博協では止めたほうがいいと思う。
 もう1点は、レジュメの「国内外の協会比較」の表。アメリカとイギリスの協会の話はちょっと置いておくとして、面白いのは、日図協との比較。以下、佐々木さんのレジュメからの部分引用。

      日本博物館協会         日本図書館協会
創設    1928年(昭和3)        1982年(明治25)
会員数   個人会員:65          個人会員:4,982
      団体会員:1,167         団体会員:2,500
      賛助会員:34          賛助会員:175
予算規模  1億2200万円          約2.8億円
主な収入源 会費、委託料          会費、出版事業、電子メディア
主要組織  常務委、各種事業に伴う     6部会、23委員会
      委員会(4)             
専従職員  3人              16人 
(全国館数)約5,600館            約5,000館 

 佐々木さんのお話の前半の“棚橋さんと日博協のルーツの話”とオーバーラップさせて考えると、「日博協vs.日図協」徹底比較研究みたいなのを誰かやらないかな? 面白い研究テーマはゴロゴロしているのに、若手研究者は、なんで市民参加論とかボランティアとかの研究ばっかりやるの?(お前に言われたくない、と皆さん思われるだろうが)。(その意味で、結論はともかく、浅草さんの着眼点は面白かったのだ。)
 で、戯言を書き連ねると、棚橋と聞くと、『衛生展覧会の欲望』を思い出してしまうし、日図協と聞くと、『図書館戦争』を連想してしまうのである。日博協は「博物館の自由」のためにたたかったことなど、一度もないのではないか??
 まあ、現実の日図協には日図協なりの悩みはあるのだろうが(前田章夫「日図協運営と図書館員の『2007年問題』」『図書館雑誌』2006.8.など)。

 おまけのページ:アニメ「図書館戦争」公式サイト