全国博物館大会(4)

 11月21日の午前には、パネルディスカッション「新公益法人制度への移行と博物館」が開催された。講師は、6月の館長会議と同様、高山昌茂先生。最初に、司会の田村専務理事から、参加者を3分類に分ける質問があった。1.財団が設置者である私立博物館、2.公立館の指定管理者となっている財団(自治出資法人)、3.その他の3分類で、ざっと見た感じでは、1が2/3強、2が1/3弱、3が若干名という内訳だった。自治出資法人の方の参加が増えている感じなのは、嬉しいことだ。自治出資法人の方たちが、危機感(当惑?)を感じていないのか、個人的には不思議で仕方がないので。
 さて、自分の勉強のために、高山先生のご講演のダイジェストを。()内は私の補足。

高山:内閣府にできている公益認定等委員会の「等」は、認可のことを言う。2階(公益財団法人・公益社団法人)は認定、1階(一般財団法人・一般社団法人)は認可だ。今回の大きな改正が12月1日から始まるが、おとつい時点で、内閣府からきた情報(アンケート結果)では、2階に行きたいと考えている法人が5割強、1階へ行くと組織決定・意思決定したところが1割強だ。残りの4割弱が態度未定だ。

 
 内閣府は12月1日から申請を受け付けるが、200法人が12月1日にエントリーを予定している。今の目安では、申請から決定まで最低3ヶ月はほしいと言われている。旧主務官庁へのこれまでの活動内容の問い合わせや、国税にこれまで滞納・処分がなかったかを問い合わせる時間だそうだ。その他に公益認定5条の18項目に違反していないかのチェックがある。内閣府は約100人弱が事務局として、事務を担当している。これとは別に国以外の都道府県では、委員会という常設の機関はなく、公益認定等審議会が出来ている。常勤ではないが、委員が選任されていて、判定をしていくことになっている。ただし事務局も、5人〜3人で、実際の申請・判断には人が足りない。今考えているのは、旧主務官庁のほうで、1次チェックをしていただく。公益認定の第5条の関係をチェックしてもらい、それをあげていき、審議会で再度チェックをして認可していくという取り扱いになっている。
 

 従って、そこでああ、そうなのかと思ったのだが、旧主務官庁の考え方を排除するというのが今回の考え方で、内閣府はそういう方向で行ったのだが、都道府県の部分は、マンパワーの関係から、旧主務官庁の判断が少し入るのかと思う。その部分を審議会のほうで公平に判断する。あげてくれたと言ってもはねる可能性はあるが、ハナから厳しく見て行くという内閣府の方針と少し温度差があるのかと思う。従って、これまで国の所管で、今回、申請だけは都道府県にするという法人もあるそうだが、この仕組みの中から考えているのかと思う。


 今回の公益認定をする場合に、これまでの財団法人は、12月1日から、特例民法法人という名前に変わる。民法第34条の法人が廃止されるので、法律は、一般法人法、公益法人法、整備法と3つあるが、その整備法で5年間、同じ形で存続することを認めましょうということになっている。12月1日から、法律が民法から整備法に変わるだけで、あとは全く同じと考えていただけばいいが、この特例民法法人=特民が、公益法人または一般法人に行くことを5年間に意思決定しなくてはならないことになっている。今、内閣府で考えているのは、H22年がピークではないかと考えていて、22年ごろになると、3ヶ月でOKが出るか分からないので、22年がピークと考えられている。遅くともH23年には、皆さん、動きを決定するだろうと言われている。


 今回の公益法人改革は、当初は民による活力ということで、天下りの問題、補助金の問題、あるいは公益法人公益法人らしからぬ行動をしていたということもあり、今回の改革をしていったのだが、やっていくうちに段々形が変わってきて、最終的には税の問題が切り離せないということになった。


 2階に行く場合は税の恩典を厚めに、1階に行った場合は、今までに比べると少し失うものはあるが今までどおり収益事業課税という形に落ちついた。1階に行った場合でも、財団法人の中で金融資産を持っている場合は20%天引きされてしまうので、大きな痛手だという考え方もあると思うが、それを抜かせば、今までとあまり変わらない、1階に行ってもやさしい改革ということになった。


 税法はさらに、1階に行った法人を2つに分けていて、1つを非営利の徹底された法人として今までどおり、もう1つを普通法人と同じように全所得課税で、普通の株式会社と同じような税の取り扱いをするという取り扱いをしている。ここは大事なところで、全所得課税を今回の意思決定の1つに入れなければならないということが、皆さん、段々分かってきた。


 例えば美術館の中にショップがあって、かなりの金額の利益を出しているという場合、今までは、みなし寄付金という制度を使って、20%の所得を減額した中で、税金を払っていたという仕組みがある。これが、2階に行って、そこが収益事業と判定された結果、みなし寄付金を50〜100%持っていくという形で考えていたでしょうが、実は、所得と利益というものが違って、全額あるいは50%全部、みなし寄付金としてもっていけるか、疑問な点が出てきている。多くは50%基準でとってくると見ているが、5割は、所得は出てくるということで、税金を払っていくことになると思う。ところが一般法人に降りて、全所得課税を採用すると、今度は全部に対して所得がかかってくることになるが、場合によっては、その結果赤字になって、所得がゼロになることもある。50%以上の金額を全所得課税で計算した結果、税金が安くなってくる場合もある。初めから全所得課税という意思決定をしないのは、いかがなものかと思う。そういうものも考えた中で、1階に行こうか、2階に行こうかの判定をしなければならない。(以下、続く)

 難しいです。これまでの個々の財団の財務内容を知らないと、実際がイメージできません。ここまでで躓いたのは、「金融資産」(残念ながらご縁がないので)と「みなし寄付金」。「所得と利益の違い」にも躓きました。とりあえず、「みなし寄付金」で検索すると、こんな用語説明や、こんなメルマガを発見。ついでに、こんな記事も。
 「所得と利益の違い」と入力すると、ちゃんとネット上で出てきました。しかし、これはさらに難しい・・・