全国博物館会議(12)

 ずいぶん、間が空きましたが、高山昌茂先生のご講演(ダイジェスト)の最終回を。【】内は、私が補足した部分。また聞き間違い(特に計算と数字の部分)の可能性が大有りなので、当然、文責は私(瀧端)にあります。あくまで、ご参考までにお読み下さい。

 ガイドラインの目次に戻ると、たくさん問題がある。会計上、必要と思った、【認定法第5条第】2号、6号、8号、9号の説明をした。


 もう一つ、7号の説明をしなければならない。<公益目的事業の実施に支障を及ぼすおそれ>というのを説明しなければならない。公益事業があって、これ赤字です。収益事業は黒字です。それがここに書いてある。収益事業は絶対、黒字。赤字の収益事業は原則、認められない。そうすると、ドキッとする方がおられる。「あ、税務署にウチは税金を納めたことがない、なぜならば、収益事業が赤字だった」というところが多いと思う。そういうことは許されません。そういう法人は、2階に来ないで下さい、ということで、収益事業というのは黒字で税金を納める事業です。それが8頁、「『収益事業等を行うことによって公益目的事業の実施に支障を及ぼすおそれ』とは、収益事業等への資源配分や事業内容如何により公益事業の円滑な実施に支障が生じる可能性が生じることであり」と、こんなふうに書いているが、これは黒字ということを要求している。


 赤字になった場合の申し開き書がある。場合によって赤字になる場合があるので、赤字になった場合には改善命令が出るので、いつ、黒字にします、といった話がある。今までの税務署への申告書と、がらっと違う申告書が今回はできてくるのではないかと想像している。


 あと、11号が引っかかる可能性がある。「同一団体の範囲」のところだが、今回の財団法人、役員、理事の方、あるいは監事の方たちだが、その構成割合が同一の団体で1/3を超える場合には、2階に来て貰っては困る、という考え方だ。いや簡単じゃないか、というが、任意団体が入っている。どこかの組織に、たまたま、同一の団体に入ってしまって、1/3を超えてしまうということがある。


 よく言うのは、参加企業がそうそうたる方で、名士ということで、一般企業の社長さんが出て下さる。経団連の役員だったらアウト。そうすると、これから理事の選任がとても大変。かつ、理事は、今度は代理出席が許されないので、今回、役員構成を180度変えないといけない。要は、参加企業が名誉職として理事の方たちを出していたが、出席は出来ませんとなってくると、ではどの辺が出席できますか?というと、課長さんクラスしか出来ません、という話もあり、そういう方たちが理事に本当になれるか、という話もある。任意団体も含めて、ダブルの役員はダメという話になっているので、その構成を考えるのが大変になってくる。


 ただし、この同一団体のところでは、2階に行った法人は除かれるので、実は笑い話でこういう法人があるが、Aという法人の役員構成と、Bという法人の役員構成が同じだとする。この法人、どちらも現在、財団法人、特民です。このままだと、構成から言って絶対上に行けない。ところが何かのはずみで、ありえないけれども、理論を簡単にするために、Aという法人が公益法人になりました、2階に行きました。2階に行った瞬間、Bという法人が1/3条項がキャンセルされて、ここがクリアになって、2階に行くことができる。早く2階に行っていただければ、1/3条項がクリアできるという話があって、「おかしいよ」と内閣府に電話したのですが、「おかしいですけど、法律がそうなってしまっているので、ごめんなさい」と謝られたが、任意団体も含めてそういうことがあって、少し改善をしてもらいたいと思っているが、皆さんからするとドキッとされるところかと思う。


 1階に行く法人は少ないのかもしれないが、実は1階に行く法人もゼロではないと考えている。先ほど、アンケートしたように、設置者になっている法人と、指定管理者を取った財団法人と、それ以外の法人で、実は例えば、収益事業を主にしていて、そこから得た資金を寄附しているというような法人がもしあるとしたら、その法人は、寄附は公益目的事業にならないから、自分で事業をしないとならないので、その公益法人は2階に行けない。そうすると1階に行くか、という話になってくる。1階に行った場合には、収益事業だから当然、税金を払う。


 1階に行く法人は、税法上は2つ分かれていて、「非営利の徹底された法人」と、それ以外の法人【共益的活動を目的とする法人】です。非営利が徹底されると、収益事業課税になる。それ以外の法人は、全所得課税になってくる。今の例をいくと、収益事業をたくさん上げています、そしてその収益を持って寄附をしています、ということになると、今までどおり、収益事業課税をする場合には、みなし寄附ということで2割カットされて8割だけ税金を納めているという法人となってくる。ところが1階へ行くと、このみなし寄附はなくなって、100%税額を払わないといけない。ところがその法人が全所得課税を選ぶと、面白い現象が起こる。


 全所得の課税だから、収益事業に対して、支出する寄附金が、国・地方公共団体になった場合、全額控除になるから、全所得課税を選んだほうが、どうせ1階に行くならば、絶対お得。その辺の税務の考え方、全所得課税というものも選んでいただきたい。ただし、どこの部分を公益目的支出計画に出す実施事業にするか。実施事業はただし、費用としてカウントされない、そこが厳しいところだが、そうすると、実施事業の金額いかんによっては、税務的に大変大きな問題になってくる。分かりづらいので書かせていただくと、


特民 公益法人
    一般法人 非営利性が徹底された法人:収益34事業だけ課税(100%課税)
          全所得課税:(収益−損益(費用))=( )に課税

               
 今、特民があり、これが、公益か一般かになる。一般に行った場合、従前どおり非営利が徹底されたものと、全所得課税がある。非営利が徹底された場合は、収益34事業以外は課税されない。今までは収益事業課税だが、みなし寄附金があって、20%寄附金を見てくれて、実は80%に課税されていた。今度は100%収益事業に課税という話になる。


 ところが全所得課税になった場合は、全部の収入から費用を引く、損金を引くという形で、これについて課税をしていく。そうすると、ここが真っ赤なものがある。例えば寄附をしたり、足を引っ張っている事業があると、全所得課税をしたほうが、ここの金額【課税対象額】が、ずっと小さくなるという形態がある。


 ところが、税もそんなに甘いものではなくて、全所得課税を採用する時には、一度、今持っている財産に課税をする。今持っている財産が、資産があって負債がありますという状態で純資産のところに課税をするが、ただし、今後やっていく支出計画の合計値は引くことができるから、結果はゼロになるはずだ。支出計画は、純資産とほぼ同額だから課税されない。結果、全所得課税に行っても、課税されないという取り扱いになっている。その場合に、この費用の中に、公益目的支出計画の実施事業だとした場合に、これは入らない。


 こういう関係にあるので、公益目的財産額の算定の支出計画は、全所得課税を取ったときに、課税に影響する支出計画だ。支出計画があまりにひどいとだめだと言われるが、内閣府で出した計算式の事例としては、47年という例を作っている。2桁は大丈夫だと思っている。3桁はどうか分からないが、2桁単位はしょうがないよ、と考えている中で、支出計画を作っていく。


 これから支出計画の話をする。FAQ24頁【問10−1−2 公益目的支出計画 モデル例】、こういう法人があったとしている。今、預金が2,000万円あって、不動産が1,000万円。これに借金が4,000万円、純資産のみてくれは、債務超過で−1,000万円となっている。そういう法人が1階に行きます、と言った場合、一回、時価評価をする。美術品は時価評価してもいいが、しなくてもいいので帳簿関係のまま、1円のものは1円だ。


 「公益目的財産額及びその計算を記載した書類」には、当然、不動産は再評価するから、純資産は14,000万円になる。従って14,000万円が、公益目的財産額として、これを何十年か単位で使って下さいということになっている。


 どういうふうな事業かというと、博物館を運営していて赤字が1,500万円、研修会を運営していて赤字が500万円、図書販売をして黒字が50万円、オフィスで出た黒字が4,000万円という法人がある。これで、もし、博物館運営と研修会を【公益目的事業として】選択していくと、全体はプラス、利益は1,000万円。ところが公益目的支出計画からすると、公益事業のうち、赤字事業として、1,500万円【博物館運営】+500万円【研修会】=2,000万円を選んだことで、公益目的財産額が14,000万円あるから、2,000万円で割って7年ということで計画を作る。


 税務の話で、この表で1階に行って、上の「非営利の徹底された法人」ということで収益事業だけとなると、収益事業になっていく部分としては、2【研修会】と3【図録の販売】と4【オフィス賃貸】あたりが危ない。研修会やることは興行業に入るかどうか、グレーな部分だ。図書の販売は物品販売業に入るし、オフィスは不動産賃貸業に入ると思う。そうすると、今までだったら、4,000万+50万−500万=3,550万円に課税されていた。ところが今後、上【非営利の徹底された法人】を選ぶと3,550万円となってくるが、知らずにこのまま下【共益的活動を目的とする法人】に行った、いわゆる全所得課税をした場合には、本来ならば、収入が1,000万。そうすると、非営利が徹底されると3,550万円に課税されるような状態のところが、下に行くと、1,000万に見える。


 ただし、実施事業の部分は費用に見られない、そうすると、2,000万全部【博物館運営のための支出1,500万+研修会のための支出500万】を実施事業と言ってしまうと、管理費なしにすると、4,000万+50万−500万−1,500万=2,050万円、全所得課税からすると、2,050万円の利益のように見える。が、実施事業を何に選ぶかによって、例えば研修会だけを実施事業に選ぶと、500万円しか【公益目的のための支出が】残らないから、何年かと言うと、14,000万÷500万円の、長い計画になっていく。この辺を考えた上で公益目的実施計画というのを選んでいく。


 特に全所得課税を選ぶ法人があれば、ここは考えながらやって下さい。一度選んだ実施事業は、基本的には変えられないことになっているので、そこもよくよく考えた上で、見ていただかなくてはいけない。ただ、博物館の運営自体は、ガイドラインの中に入っているので、新しい尺度としても公益目的事業だと考えられているから、あとで差し替えというのは、十分にできると考えられる。公益目的支出計画を選ぶ場合には、税のことを十分考えた上で、意思決定をしていただきたい。(高山先生のご講演部分は以上で終わり)

 FAQ24頁のモデル例を使った説明の部分の計算・数字は、私が書き間違えている可能性があります。ここにアップするのは控えるべきとも迷いましたが、大事なポイントと思われ、また上手に要約することもできないので、復元可能な範囲で、お話を復元しました。興味・疑問を持たれた方は、専門家にご確認下さい。

 なお、先日知ったことですが、日博協の研究協議会(庶務・管理部門、2009年2月19・20日、於神奈川県立歴史博物館)で、「新公益法人移行の実務」のパネルディスカッションや、横浜美術館長 雪山行二氏のご講演が企画されています。これは、ぜひ行かなくては!