プラハからチェスキー・クルムロフへ

 8月18日(火)、朝食後、聖アネシュカ修道院を探しに行く。果たして、ホテルの通りを挟んだ向かいの小さな教会のその先に、国立美術館中世部門があった。目と鼻の先だ。小さな裏口のようなところに、美術館の看板が立っていた。

 修道院の周りを一周しようとすると、隣接の建物は別のもののようで、その裏に廻ると、ヴルタヴァ川の土手と車道、ゴミ収集車が止まっていて、ふと見ると、アネシュカ修道院の壁のくぼみに、ホームレスおじさんが一人、身を縮めていた。
 後ろ髪を引かれるが、開館時間の10時まで待つわけにもいかず、ホテルをチェックアウトして駅へ向かった。途中、火薬塔のあたりで道を間違えたようで、地下鉄ムステーク駅にぶち当たった。慌てて、地下鉄でプラハ本駅まで行くことにした。1駅で乗り換えてまた1駅で本駅へ。乗ること自体は簡単だったが、切符は買い間違えた。75分有効券を買ってしまい、勿体ないことをしたと思ったが、荷物券も必要だったことを後から思い出したので、金額的には実は払いそびれがあったようだ。プラハの公共交通の料金体系は複雑だ。
 さて、9:14プラハ発のチェエスケー・ブディェヨヴィツェ行きの列車に乗り込んだが、発車して30分くらいしたころ、車掌さんがきて、何事かを告げて廻っている。チェコ語だから、まるで意味が分からない。同じコンパートメントのおばさんが、書くものを貸して、と身振りで示してくれ、メモ帳を渡すと、BENSON→(バスの絵)→C.BUと書いてくれた。どうも線路の具合か何かで、列車が運行できず、バスの代替輸送になるというのだ。
 止まった駅でみんな降りて、ゾロゾロとバス2台に乗り換える。20分ほどバスに乗ったあとで、小さな駅で降ろされ、そこには、別の列車が待っていた。既に乗っている乗客が大勢窓から顔を出して、私たちの様子を笑って見ている。で、無事、20遅れくらいでチェエスケー・ブディェヨヴィツェに到着、チェスキー・クルムロフ行きのローカル線に乗り換えた。

 4人掛けと6人掛けのシートが向かい合い、シートの背が低いので、行楽列車のような気分。各停で、沿線風景も起伏に富み、駅構内で羊が草を食べていたり、なごやか。途中、小さなきれいな町が見えた。

 チェスキー・クルムロフ駅からはバスが便利とあり、駅前のバス停で待つ。他のお客さんは、大きな荷物を持ったまま、町へと歩き出した。地元女性に地図を見せて尋ねると、大丈夫、自分も行くから、みたいに答えてくれて、チェコ語だからまるで分からないのだが、バス内でも、こっちにおいでと呼んでくれ、結局バスを降りてからも、ここがシアター、ここがムセウム、と案内しながら、ホテルの見える広場まで連れて行ってくれた。ちなみに、最寄のバス停は、バスターミナルの一つ先Horni branaで、なぜか日本語で「風」と書いてある。
 お昼はチキン料理と、ヤギのマークの黒ビール(ヴェルコポポヴィツキー・コゼル)。それからエゴン・シーレ文化センターへ行った。エゴン・シーレの作品は数少なかったが、なかなか過激。これは日本の美術館で公開できるかな?と思うものもあった。

 ロシアのビデオアートの特集“radical everyday”が開催中で、3作品しか見ることができなかったが、Leonid Tishkovの“Farewell to Christmas Tree”が一番興味深かった。
モスクワの高層住宅街で、捨てられたクリスマスツリーを延々と写真に撮り、そのうち1本などは、窓から捨てられたまま街路樹にひっかかり、やがて春になって枯れ果てても、まだ同じところにぶら下がっている。作家が、このツリーを棒で落とし、ツリーとスコップを持ったまま、地下鉄に乗り、郊外の墓地へ行き、穴を掘って埋葬する・・・という内容。2001年の作品となっていたので、モスクワってこんなふうなのか、が興味を引いた。高層アパートはざっと20階建てくらいか。ショップの様子や地下鉄、乗客の反応など、見ていて面白い。
 また、“Political Posters of the USSR”もやっていて、かなり大規模な展示。バリバリのポスターから、かなりユーモラスなものまで。ダンプの運転手はいません、今日は釣りの日だから、牛乳絞りのおばさんはいません。今日はキノコ狩りの日だから。みたいな。

 この文化センターは、ビールの醸造所の建物を利用したもので、天井の低い建物自体に趣がある。映像コーナーには、古いまちまちま形の椅子が並べられていて、これがまた気持ちいい。
 それから街をぶらぶら、お城を覗いたり、庭園に行ったり。中国人観光客が非常に多く、まるで昨年のノルウェーフィヨルドツアーみたいだ。旅行社が特定の場所を売り込んでいるのだろうか。日本人は、若い女性2人連れがちらほら。写真は仮装した中国のお嬢さんたち。

 夕飯は、魚(マス?)のフライと地ビール2種。エッゲンベルグのライトとダーク。

 それから、聖ヴィート教会へ行った。たまたま、パイプオルガンの演奏が始まったところで(もちろん無料で)、座って演奏を聴きながら、あちこちしげしげと眺めた。生でパイプオルガンの演奏を聴いたのは初めてかもしれず、ちょっと感激。