エル・ライブラリー館長スペシャル講義

昨日(1月18日)、エル・ライブラリー館長の谷合佳代子さんに、「社会教育概論2」のゲスト講師としてお越しいただいた。歌って踊れるパワフル館長さんに、歌っていただく時間がなかったのは残念・・・(と、冗談はさておき)。
ご講演のタイトルは、「<民事再生>図書館、エル・ライブラリー奮闘記 〜大阪の経営・労働資料を守り伝える〜」。

 初めに少し図書館学的なお話。設置者別、サービス対象者別の図書館の分類や、MLA連携の背景など。灰色文献(一般には流通しない文献)についての説明のあと、持参いただいた実物資料を見せていただいた。資料は三井三池争議の際の灰色文献と「棍棒」。この棍棒は、館での所蔵を知り、製作者の息子さんが一目見たいと来訪され、製作を手伝った時に指にできた傷まで見せてくれたそうだ。実物資料のなせるわざ。

 ところで、驚いたのは、谷合さんが教室で見せてくれたYou Tubeの動画。
「三井三池争議−1959&1960」の記録映像(音が出ます)。こんなのYou Tubeに出てるんだ!

 また、講義中、所蔵資料の紹介には、エル・ライブラリーのブログやフォトライフを活用、ネット上の文字は教室投影では読みづらいが、画像は拡大できるので、こういう使い方もアリかと思った(教室で見せていただいた、フォトライフ連動の資料一覧表が、どこにあるのか探せませんでした>谷合さま)。【1月21日追記:授業で見せていただいた資料一覧はここでした。→報告:第80回メーデー記念「働く人々の歴史展」(Picasaウェブアルバムに連動でした)

 「国立産業技術史博物館」資料引き取りに関しては、館のブログ上のボランティア募集記事が、ブックマークで82ユーザーを記録、募集後、瞬く間にボランティアの募集を締め切るほどの反響だったこと、またブックマーク上位記事を毎日チェックしている毎日新聞の記者さんから取材申し込みがあったこと等を、紹介していただいた。

 財団法人大阪社会運動協会(社運協)と大阪府大阪市との関係についての説明は以下の通り。以下、私のメモをもとに講義の一部を再現。

 労働運動史は、各自治体が作っているが、東京や大阪はない。明治以来、大阪は労働運動の中心地だった。府に、労働運動史を作るよう要請したところ、府では作らないから財団を作りなさい、補助金を出すから、と言われて立ち上げたのが社運協の始まり。『大阪社会運動労働史』編纂のために集めた資料が、社運協の資料だ。橋下改革により、大阪府からの補助金はゼロになった。大阪市補助金は、府の補助金と連動しているため、市からの補助金も切られた。2008年度に、府・市からの補助金はゼロになった。


 エル・ライブラリーの前身、大阪府労働情報総合プラザは、以前、エル・おおさかの中にあったが、府の財政再建策の下、廃館された。社運協は、運営費を1/4に下げる(利用者を4倍に上げる)ほど、公設民営で成果を出していたが、随意契約であることを理由に、切り捨てられた。府の図書館としては潰されたが、社運協は、新しい図書館エル・ライブラリーを立ち上げた。財団としての社運協の2007年度の総予算は3,200万円(2,200万が、府・市からの補助金)、この補助金がゼロとなり、2008年7月末に大阪府労働情報プラザが閉館、プラザ運営のための委託金も切られ、2009年度予算は、寄附金を主とする1,000万円である(家賃、光熱費、人件費込み)。


 こうなると、出費を減らし、収入を増やすしかない。4人いた正職員のうち、一人は、転職、残った職員の給料は1/3にを大幅カット。廃品回収で使えるものは拾ってくる。府立図書館OBが持参金(寄附金)付きで、ボランティアに来て下さる。非来館サービスを導入することで、常時留守番役がいなくてもいいようにする等の工夫をしている。


 入りの増加策としては、サポート会員から寄附を募る。年間360人、350万円になる。その他、労働組合の組合史の編纂事業の下請けをして、事業費収入を上げたり、イベントの開催や、本の販売、募金箱を置くと年間で16,000円が集まった。


 こうして、エル・ライブラリーは1年持ちこたえたが、問題はある。エル・ライブラリーのような先例は、労働ダンピングで、(他施設の)労働条件の引き下げにつながる。この問題は、答えは出ない。指定管理者制度も、人件費が安く抑えられる労働ダンピングだ。


 専門職の使命は、資料を守ることであり、苦難があっても、誇りを持って働いてほしい。

 谷合さま、ありがとうございました。お疲れ様でした!