『悪女の老後論』

 堀江珠喜『悪女の老後論』(平凡社新書、2007)を読んだ。痛快な本で、職場への行き帰りで読んで、残りは夕食後、一気に読んでしまった。

 実の母親を神戸の繁華街近くの有料老人ホームに入居させたお話。堀江さんは、最初は、「姑(おや)を老人ホームに入れる方法」というタイトルで本を書きたかったらしいが、相談した編集者たちからは、断られたらしい。出版社が躊躇した理由は、1.堀江さんが福祉のプロではないこと、2.若い男性編集者が「親が可哀相」と考えたこと、3.「お金のない読者の反発を買うから」、の3点だったそうだ。

 堀江さんは、特に3について、「東大受験の方法」とか「マイホームの賢い建て方」のような本を出すときに、資金のない読者からの反感を心配したりしないだろうに、と反論している。有料老人ホーム入居についての出版だけ、経済面を配慮しなければならないのは、それほど「老後」の問題が深刻だからではないかというのが、堀江さんの推測だ。

 それはともかく、堀江さんは、「悪女」どころか、大変親孝行だと思う。書き方は挑発的だし、さすが女学院出のお嬢様、と思う部分がないではないが、ここ最近のストレスを吹き飛ばしてくれる、あっけらかんとした記述が嬉しい。最近の若い学生さんたちは、「親の老後ぐらい自分で見ろよ」と言い放って屈託がないので、こちらは絶句してしまうのだ。