館長会議/『博物館研究』5月号

takibata2008-05-11

 先日、日博協の『博物館研究』5月号が届いた。その中に、館長会議のお知らせが入っていた(会費請求書も入っていたが・・・)。館長会議などという畏れ多いものには行ったことがないが、今年は、公認会計士の高山昌茂さんの「新しい公益法人制度について」の講演がある。これは万難を排して行かなければ、ということで申し込みを済ませた。
 私が気になるポイントは、新公益法人制度が、自治出資法人にどのような影響を与えるのかという点である。関西圏の知人に尋ねても、誰もこの疑問に答えてくれる人はいない。『地方財務』4月号(ぎょうせい)でも、「シリーズ 公益法人制度改革 公益法人改革、準備本番!」という連載が始まったが、初回はわけの分からないおやじギャグしか書いてない印象を受けた(もっとまじめに情報整理して書いてほしい)。
 
 『博物館研究』5月号には、浅草澄雄さん(国立科学博物館)の「『博物館冬の時代』を乗り切る―博物館と科学研究費補助金―」という投稿が掲載されている。この中の、表2「科研費指定博物館の採択件数・配分額(平成19年)」という表が実に面白い。こういう一覧表を見たのは初めて。
 浅草さんが指摘する通り、「国立歴史民俗博物館国立民族学博物館国立科学博物館の3館で採択数の4割・配分額の6割を占め」という現実はえぐい。公立館のダントツトップは、採択数・配分額とも、北海道開拓記念館である(14件)。行ったことがないが、どんなことをしている館なのだろうか。件数で2位は、大阪歴史博物館(8件)。
 自然史系では、件数順では、千葉県立中央博物館(7)、滋賀県立琵琶湖博物館(7)、兵庫県人と自然の博物館(5)、北九州市立自然史・歴史博物館(5)となる。
 この表に、学芸員数とか、年間予算とかをつけると面白いと思う。平成19年度分だけというのも不公平な感じがするので、せめて数年分を載せるとか。いずれにせよ、こういう調査を今まで目にしたことがなかったし、こういう研究手法がありえるという点で、非常に面白かった。
 浅草さんは、分析に向かうのではなく、その主張は、「日本博物館学協会連合の創設」という話に向かう。荒っぽく要約してしまうと、日博協が博物館学協会連合の中核となり、博物館関係学会、博物館関係協会から人や資金を「連合」にある程度集約し、常勤研究者を雇用し、科研費の研究機関の資格を取得し、全国の学芸員を「非常勤研究者」に位置づける、というプランである。科研費が採択されれば、日博協には間接経費が配分され・・・という壮大な夢が描かれている。
 私はこの話を読んで、2〜3日、まじめにあれこれ考えてしまった。表2は面白いが、後半の展開は、ふつう、実証研究という立場から考えると、まず、博物館関係学会とか関係協会の事務局がどういう形で運営されているかとか、財源にどの程度余裕があるかとか、調べないものだろうか。「博物館連合に人や資金などがある程度集約できれば」とさらっと書いてしまう感覚が理解できない。
 浅草さんは、科博の若手研究者のようだから(文末に、科研費若手研究(B)研究代表者と書かれていたので)、理系の人って、こういう大胆提案をしてしまうのかな、とか、この大連合の図は、文科省の栗原さんのスライドの最後の方とよく似ているから、中央(東京)にいると、こういう発想になるのかなあ、などと、朝、目が覚めたときに、あれこれ考えてしまった。
 今朝、浅草澄雄さんのお名前で、ググってみて、疑問は氷解した。検索トップに来たのは、このページ→http://www.bunkanken.com/archive/news/commu_news13.html 浅草さんは、もともと、文科省生涯学習政策局社会教育課の方だったようだ。

 写真は、鉄輪温泉・海地獄(2008年5月6日撮影)