和歌山で考えたこと(串本海中公園他)

 まず、花山温泉のこと。花山温泉には、30年ほど前、一人で来たことがある。その時の記憶は強烈で、湯船の縁に茶褐色の湯の花が分厚く垂れ下がり、お湯も茶色いどろどろだった。バスに乗り、街中を歩いて行った記憶があるが、何の本でその存在を知ったのかは思い出せない。長い間、ピカ一の温泉の記憶として大切にしていた。
 その温泉が、まだ健在だと知ったのは、今年の秋の和歌山での学会発表の折。帰宅してから和大で貰った市内パンフを拡げてみて、もしかして、これはあの時の?!「花山温泉」という名前が甦ったのだった。HPを検索してみると、どうもあの思い出の温泉に違いない、ということで、今回の温泉行きになった。
 行き道の風情も、温泉の中も、恐らく改装されたのだろう、露天風呂が出来ていたり、透明な湯の浴槽もあったり、あの、分厚い浴槽の縁も、随分薄くなった気がするが、ともかくも、懐かしの湯は、今も営業を続けていた。こうなると、残るは、もう一つの幻の温泉(たぶん、奈良県の吉野近辺の山の中の湯治場だと思う。これも30年ほど前に行ったが、名前を思い出せない)を探さなくては。

 温泉を堪能したあと、温泉の食堂に入った。ちょうどお昼どきで、お客さんがたくさん入っているのに、調理場には、おじいさんとおばあさんの2人きり。私の親くらいのおばあさんが、忙しくまめまめしく盛り付け、配膳に立ち働くのを見ていると、なんだか、座って、食事が運ばれてくるのを待っているのが、申し訳ないような気持ちになってしまった。これは、泊まった椿温泉富貴も似た事情で、3連休のような人の多いときの食事は、かなり年配のおばあさんが運んでくれる。そこで思い出したのは、大町で聞いた佐渡の民宿の話。「佐渡の民宿はどこも高齢化していて、後を継ぐ人がいないから、佐渡へ行くなら今のうち」という。層雲峡の派遣の仲居さんも、結構なお歳だったなあ・・・。
 というわけでカンガルーハウスや、コアラハウスを運営できるような大手でないと、日本のローカルな観光業は、担い手がいなくなる??
 どこが、観光立国やねん!と思った次第。

 2日目に行った串本海中公園。ここは、35年くらい前に、海中展望塔に行った。その時は、春休み期間で、期待したほどには、魚が見えなくてがっかりした記憶がある。海中展望塔も、赤い橋も昔のままだが、新しく(?)投入された半潜水型観光船ステラマリスというのが、人気のようだ。

朝、共通券を買って、10時の船に先に乗ることにした。出航間際に乗り込んだので、船内は一杯で、かろうじて、韓国からと思しき団体さんの横に空きスペースを見つけた。座席に座ったまま、大きな窓から海中や海底をのぞける仕組み。ガイド女性が乗っているのだが、船のエンジン音や歓声にかき消されて、説明はあまり聞こえなかった。


 2種類のサンゴ(たぶん、クシハダミドリイシと、コシバミドリイシ)、海ガメの泳ぐ姿、ニセクロナマコ、そしてたくさんの魚たち。白浜円月島前のグラスボートよりも、迫力があった。

 ステラマリスの次に、海中展望塔へ行った。

塔の入り口に、切符を見るでもなく、「いらっしゃいませ」と言っている、ジャンパー姿のお兄さん。この日は、塔のたくさんの窓から、魚やイカ、ナマコが間近に。


クマノミソラスズメダイ、ツノダシ、キビナゴやイワシの群れ、上のほうには、大きなメジナがいっぱい。夢中で見ていると、いつの間にか、一周以上廻っていたことに気づく。途中で、ふと、こんなに魚が多いのは、餌付けしているのではないか?という疑問がよぎった。

 果たして、塔の入り口へ戻ると、1袋100円で、魚の餌が売られているのだった。子どもの強い希望で、200円を投入。入り口のジャンパーのお兄さんは、腰かけて本を広げていた。何気なく覗くと、横書きの、何か専門書のようだった。このお兄さんは、研究員さん?? あとで知ったが、ここには、研究所もある。
 
 お昼ごはんを食べに、食堂へ行った。全面オーシャンビューの素晴らしい立地なのだが、メニューが、カレー・キツネうどん・から揚げとか、期待を裏切るメニュー中心。海中展望塔から見えていた、素敵なログハウス風の場所(串本ダイビングパーク)まで、行ってみることにした。

レストランはあったが、果たしてこちらのメニューも、ピラフとかスパゲッティとか。普段のお昼ご飯と同じようなものを、串本で食べたいと思うだろうか??
 仕方なく、もとの食堂に戻って、いまいちの刺身定食を食べる。奥の、ビニールで仕切られた団体客用の一角から、陶板焼き風のいいにおいが漂ってくるのは、不公平ではないか。ステラマリス、展望塔、そして後から行った水族館も新しく素晴らしいのに、食堂だけが、出遅れているのだ。食券方式だし(ここも人手不足か)。この立地だったら、店内をおしゃれに改装して、地元の鮮魚料理を出せば、もっと客単価が稼げるし、今以上に人気のスポットになるのに。クレジットカード対応にすれば、財布のヒモはさらに緩むはず。

 さて、水族館(マリンパビリオン)。


華やかなサンゴ礁水槽や、生物多様性水槽の数々。スナイソギンチャクとムラサキハナギンチャクの美しい水槽には、繁殖賞が貼ってあり、ここが動水協の加盟園であることを知る。




キャプションは韓国語、中国語対応。事実、駐車場には、中国語の大型バスが止まっていた。ウミガメがたくさんいるプールでは、ウミガメへの餌やりがある。こちらは、一袋200円。面白いのは面白いが、多少違和感も。まだこちらは、水族館で飼ってるものだから、仕方ないとして、海に餌を撒くのは問題ないのか・・・。

 その次の日は、大島の樫野釣り公園センターで釣り(の真似事)。【釣り情報は、この方のサイトに詳しい。http://kitahata55.co.jp/turi/turi-kouenn/kouenn.htm#wakayama】雨の中、酔狂なこと。地元の、やけに釣りに詳しいおじさんと、親戚一家(夫婦に女の子)だけがほぼ同時についたお客さん。おじさん一族は、大きな鯛とか、ハマチとかをばんばん釣り上げていた。大物ばかりを釣りあげて、その場ですかさず、グサッとナイフを入れて、どっと血が出るのが、えぐいなあと思って見ていた。しかし、こうして魚と人間の関係を考えると、そもそも彼・彼女らは、我々の食料なのだ。水族館(の狭い水槽で生き物が飼われていること)も、水中展望塔の餌撒きによる生態系の撹乱(?)問題も、ナイフでグサッの前には、かすんでしまう。漁業ならもっと大掛かりだ。

 樫野釣り公園は、樫野漁港の直営で、ここの食堂が今、ブレイクしている。イセエビ丼2,500円がお得メニューらしい。雨の中、満杯のお客さんがバンバン、イセエビ丼を注文している。バスの時間が迫った私たちは、イセエビ丼を食べ損ねた。