Nordiska museet(8月26日)

 8月26日(火)、晴れ。朝、ストックホルム中心街にある、ヒョートリエットのマーケットを見に行く。Sさんが見たら喜びそうなキノコの山。店のお兄さんに、“ニハオ”と声を掛けられたので、“ニハオ”と言い返す。

Nordiska museetへ行く。スカンセンと同じユールゴーデン島にあって、スカンセンの手前にあったので、昨日と同じ47番のバスに乗り、今度はすんなりとたどり着くことができた。10時の開館までに時間があったので、島から張り出した水上カフェで時間を潰す。バスの運転手さんが自慢する通り、ストックホルムは水に囲まれた美しい街だ。保母さん、保父さんに連れられた幼児たちが、橋を渡って行く。個人のボートも通り過ぎて行く。

Nordiska museetは、ガイドブックには入館無料と書いてあったが、行くと有料になっていた(60クローネ)。あとで行った現代美術館も常設展無料のはずが有料になっていたから、スウェーデンも財政的に厳しい局面を迎えているのだろう。

2階がメインホールになっていて、左手が特別展会場、右手に、ショップとレストラン。特別展は、仮面をテーマにした展示。最後に、デスマスクのコーナーがあって、アットゥール・ハセーリウス(この表記はスカンセンのPRファイルに従った)のデスマスクもあったのには、ぎょっとした。このNordiska museetは、スカンセン創設以前に、ハセーリウスによって創設されたもの(1873年、Scandinavian Ethnographic Collectionとして開館、1878年のパリ万博での成功を機に、1880年、 Nordiska Museetと改称、新館建築がなされたのは、ハセーリウスの死後6年経った1907年。ちなみに、スカンセンのオープンは、1891年)。
一番面白かったのは、3階のテーブル・セッティングの展示で、1500年代から1900年代までの食卓光景が当時の料理書をもとに再現されたもの。なぜか無意識のうちに、展示をさかさまから見てしまう癖のある私は、この展示も、1900年代の方から見てしまった。テーブル・セッティングの立体展示の反対側には、それぞれの年代に合わせた食器類が展示されている。個々の展示には、詳しい解説がついていて、例えば、この時代には男の人と女の人は別々に食事をしていたとか、食事ができるまでに、男たちが一杯引っ掛けるコーナーだとか、主婦がアフタヌーンティーを一人で飲むセットだとか。記録が残っているものを復元しているので、時代が古くなるほど、上流階級のテーブル中心なのだが、度肝を抜かれたのは、白鳥が料理されて、しかも、背の部分だけがパイのようになっていて、頭、首、羽、尻尾などは、水に浮かぶ白鳥そのままの形・羽根になって、銀のお皿の上に載っているもの。わが目を疑うような驚き。白鳥だけでなく、白い鳩のような鳥も、背中だけパイで、やはり空飛ぶ鳥の形で、頭・羽根つきで、お皿の上に載っている。何か、根本的な違いというのか、信じられない。この展示については、カラー写真入りの本が下のショップで売られていたので、買って帰った。
もう一つ、印象に残ったのは、サーミについての展示。サーミの女性の語りを映像で流していた。私が理解できた範囲では、20世紀初頭、racial biological studiesが行われ、サーミの人々の着衣・脱衣の身体計測と写真撮影が行われた。また、グループの写真も撮影されたが、それは家族の特徴やパターン、多様性を示すためだった。サーミの女性は、“この写真は、自分の祖母の普通のファミリー・フォトだと思っていた。でも、今、それは、charged pictureに変わってきた・・・”と話して、“おばあちゃんたちは、その時、何を考え、何を感じたのだろうか?”と問いかけてくる。
次の部屋には、おそらく、その20世紀初頭に作られたものと思われる、調査カードがずらりとカードボックスに並べられていた。また反対側には、第二次世界大戦後、サーミの人々が作り始めた組織や、現在の暮らしぶりのパネル展示や、工芸品の展示などが行われていた。なお、サーミについての本も何冊かショップで販売されており、薄手の一冊を買って帰った。その中に、「(身体や頭の計測の結果、)サーミの人々は、劣った人種であるとみなされ、そのことは、発展しつつある産業社会と福祉国家の外部に彼らをとどめ続けようとする企てを正当化した」との一文があった。展示は、現在もスウェーデン社会に残る、差別と偏見をなくそうという趣旨で作られているものと思われた。が、展示を見ていたのは、私一人だった。
実は、この博物館、展示の部分は、がらんとしている。かといって、人がいないのではなく、2階のレストランは大変、賑わっているのだ。どうも、レストラン目的で、入館しているのではないかと思えるほど。そこで、その行列の出来ているレストランに並んでみることにした。レストランといっても、カウンターで料理を受け取るものだが。メニューはスウェーデン語オンリーなので、食事をしている人の様子を覗くと、選択肢は、ライスに豆とお肉をかけたのか、丸いポテトがたっぷり載ってるのの、2種類が、ランチメニューらしい。それで、“ポテトの”と言ったら、“サーモン?”と聞いてくるので、主菜がサーモンだということが分かった。このボイルサーモン+ポテトのランチは、大変おいしく、サラダとパンは取り放題だったので、この食堂の人気の理由が分かった。観光客だけでなく、公務員風の人などが、明らかにランチだけ食べに来ているような感じで、私が食べ終わる頃には、団体観光客がどっと入ってきた。入館料は、どういう扱いになっているのだろうか?
ショップも充実していて、“On the Future of Open Air Museums”(2008:ISBN 978-91-7948-213-8)という本を入手した。この会議の記録集のようだ。
他には、yasumaruさんも買われたという、Nordiska museetの125周年本。重かった! 下の写真は、Nordiska museet前の公園。