福岡アジア美術館

 出張で九州に来ている。開館の10時を待って福岡アジア美術館へ。お目当ては「現代中国の美術展」。が、期待したほどのわくわく感はなかった。前回初めて訪れた際のベトナム絵画展の印象の方が強烈だった。
 今回の中国展で、一番印象が強かったのは、ジアン・イェの「迷彩青春」。「大学の新入生による軍事教練の広場の風景」とのことで、画面一杯が迷彩服姿の大学生の顔、顔。数え切れないほどの顔ばかりなのだが、それぞれに表情が描き分けられている。圧倒的な存在感。
 もう一つは、ジャン・リーゴンの「兵士シリーズ四」。手に紐をかけて、レンガを2個ずつぶら下げる男たち。拷問?とか一瞬思うが、ラベルを読むと、「訓練を受ける軍の隊員たち」とのこと。構図が変わっていて、「大透視、大視覚、直角構図」なのだそうだ。こういう変な角度から描かれている絵は、初めて見た。
 小ネタ的に面白かったのは、リー・チュアンカンの「一家四人」。というタイトルなのだが、画面に刷り出されているのは、女の人と、男の人と、女の人に抱かれた幼児。あとは、大きな犬一匹と、ぬいぐるみの熊一匹。で、四人っていうのは、誰なんだろう? 犬? クマさん? それとも、レンズを構える人? と、無意識のうちに、写真撮影だと思い込んでいる自分に気づく。それぐらい、この展覧会の作品は、まるで写真のような作品が多いのだった。
 時間が余ったので、常設展の方を見る。前回時間が足りなくて、最後の方の過激な映像作品を十分に見られなかったので、今回は、前半はばんばん飛ばして見る。ところが何と、一番楽しみにしていた後半部分は、「アジアン・キッズ」という小企画展になっていたのだった。前回のも、常設ではなかったのかな? 
 出口と、アジカフェの間の壁際では、公開制作。はじめは公開制作とは気づかなかった。昼食を待つ間に、レジデンス事業で招聘されている、ブータンの作家、リンチェン・ウォンディさんだと分かる。会釈をして、作品や画材類を覗かせていただくが、こういうのは、しげしげと眺めていいものか、声をかけていいものか、戸惑う。たぶん、話しかけてもいいのだろうけど、でも、その間に筆が止まるのもなあ、と思う。異国の地で、公開制作をする作家の胸のうちは、どのようなものだろうか。