読書

『何でも見てやろう』

ここ数日、持ち歩いて読み続けた、小田実『何でも見てやろう』(講談社文庫、1979。ただし単行本で最初に刊行されたのは、1961年のようだ)を先ほど、読み終えた。 小田実さんの本は初めて読んだ。世代的なこともあるが、小田さんの存在とは、これまで、何の…

『古文書返却の旅』

網野善彦『古文書返却の旅』(中公新書、1999)を読んだ。面白くて、という表現は不適切かもしれないが、夢中で読んだ。通勤の途上で読み、最後は、道を歩きながら読んだ。 1949年に水産庁の東海区水産研究所で始まった、全国各地の漁村の古文書を借用・寄贈…

『歴史学のアポリア』

小田中直樹『歴史学のアポリア ヨーロッパ近代社会史再読』(山川出版社、2002)を読んだ。著者自身による案内文は、こちら。→http://www.bk1.jp/review/0000065176 歴史を研究することは可能か、歴史を学ぶことに意義があるか、という問いをめぐって、フラ…

『僕の叔父さん 網野善彦』

中沢新一さんの本を初めて読んだ。中沢さんが、叔父の網野さんに出会った1955年から始まり、中沢さんの高校・大学時代・1983〜84年頃を中心に、網野さんと意見を交わし、刺激しあった日々が記されている。網野さんの三著作(『蒙古襲来』『無縁・公界・楽』…

『財政のしくみがわかる本』

夕方、傘を持たずに犬の散歩に出たら、途中、突然、バタバタと雨が降り出し、土砂降りになった。目も開けていられないような惨状。 さて、神野直彦『財政のしくみがわかる本』(岩波ジュニア新書、2007)を了読。しょっぱなで躓く。「江戸時代までは、・・・…

『歴史学ってなんだ?』

たどり着いた経緯は忘れてしまったが、ブログを楽しみに読むようになった小田中直樹さんの『歴史学ってなんだ?』(PHP新書、2004)を読んだ。 第1章は「史実を明らかにできるか」という大問題を様々な角度から扱っていて面白い。「『大きな物語』は消滅し…

“Walker Art Center”

今学期の授業もあと半月になった。あともう一息だが、まだ試験問題の作成が2科目分残っている。今年の講読の授業では、“Walker Art Center”(2005)を読んでいる。最後まで読みきれるかと思ったが、少しだけ残してしまいそうだ。材木を扱って大金持ちになった…

雑誌記事3本

法改正問題を少し幅広く考えようと思って、雑誌記事を3本読んだ。いずれも、面白かった。 ・ 佐久間亜紀「なぜ、いま教員免許更新制なのか 教育ポピュリズムにさらされる教師たち」『世界』2007年2月号、121−130頁。 ・ 佐久間亜紀「誰のための『教職大学院…

他分野の人が読んでも面白い論文

最近届いた『人文地理』59-2(2007)の巻頭論文(論説)、北川眞也「現代の地政学における例外空間としての収容所―イタリアの不法移民収容所へ「歓待」する生権力―」は、たいへん面白かった。封を開けて、パラパラめくったとき、写真が目に入って、思わず読…

『環境問題の現場から』

2日続けて、久々の飲み〜。往復の車中で、数日前から読みかけにしていた伊藤達也・淺野敏久編『環境問題の現場から 地理学的アプローチ』(古今書院、2003)を読み終わった。著者によってだいぶスタンスの違いがあるものの(違いがあるからいいのだが)、興…

『雷鳥が語りかけるもの』

今日は朝から、中村浩志『雷鳥が語りかけるもの』(山と渓谷社、2006)を読んだ。非常に面白く、読み出すと一気に読んでしまった。恩師羽田健三さんに見込まれ、助手として採用された義務から取り組んだライチョウ研究だが、日本と違い海外ではライチョウが…

『滝山コミューン一九七四』

小田中さんのブログで目にしてから、気になっていたら、10日の朝日の書評欄でも大きく取り上げられていて、注文した本、原武史『滝山コミューン一九七四』(講談社、2007)が昨日、届いた。眠くもならずに、一気に読んでしまった。 実物を読むまでは、なんと…

柿木さんの論考(2)と「美術博物館の大規模改修工事」

昨日、書き残した2点というのは、115−116頁のところだ。 しかしながら、美術博物館というものにさほど関心があるわけでない市民の方々と話してみると、どうやら次のように考えるものらしい。 まず、「市の財政問題」はなかなかわからない。どういうところに…

柿木さんの論考(1)

芦屋のシンポの会場で購入した、中川・松本編『指定管理者は今どうなっているのか』(水曜社、2007)収録の、柿木さんの論考「NPO法人芦屋ミュージアム・マネジメント―芦屋市立美術博物館をめぐる事情とその展望」について。 買って読んでから日が経ってしま…

『「へんな会社」のつくり方』

金曜の晩、『フューチャリスト宣言』に続いて、近藤淳也『「へんな会社」のつくり方』(翔泳社、2006)を途中まで読んでしまった。続きは見学実習の帰りのバスの中で読んだ。なにせ、常滑〜茨木間は、3時間半かかるのだ。 驚いたのは、本の中の写真。はてな…

『フューチャリスト宣言』

今日、○○が無事終わった。なんとなく予感はあったのだが、初対面の先生は、想像通りベテランの、もののよく分かった先生で、フレンドリーにお話が弾んだ。掃除のほうは、昨日の晩、どっと疲れが出て突然眠くなったので、もういいや・・・で、とりあえず玄関から…

『生き物屋図鑑』

訳あって盛口満『生き物屋図鑑』(木魂社、2006)を読んだ。何人か知り合いが出てくることもあり、以前からパラパラとめくっていたのだが、通して読んで、いろいろ考えることがあった。 一番印象に残った言葉は、「ゲッチョと話すのイヤだな。だって何でもメ…

『美を想う女性群像―わたしの美術館―』

上記の本を読んだ。朝から読み始めて一気に読み終わった。編者のお名前は明らかにされていないが、ぜひ、この企画を考えた(株)大日本絵画の編集者にお目にかかりたいものである。著者は14名の女性学芸員さんたちの連名。タイトルとともに、著者名と、この…

『Q&A 実践・指定管理者制度』

一般入試も残すところあと1日、少し春が近づいた気分だ。 3冊ほど、指定管理者制度関係の本を読んでいる。 1. 尾林芳匡『自治体民営化と公共サービスの質』自治体研究社、2006年11月。 2. 地方行政改革研究会編『1冊でわかる! 地方公共団体のアウトソ…

『情報のさばき方』

今日は朝から雪。犬の散歩に出ている間に降り始め、犬の背中に雪が積もった。30分ほどの間に、公園が真っ白になった。 外岡秀俊『情報のさばき方』(朝日新聞社、2006)を読んだ。1953年生まれの著者は朝日新聞東京本社編集局長で、ジャーナリスト入門編のよ…

『スキャンダル戦後美術史』

昨日届いた本の3冊目がこの本(大宮知信『スキャンダル戦後美術史』平凡社新書、2006)。Mさんの話題に出てきた「氷河期」が気になって読んでみた。本当に、「入場者が長蛇の列となる『ゴッホ展』とか『藤田嗣治展』などを見ると“美術館冬の時代”なんてどこの…

bk1のスピード

昨日の午後、航空会社のサイト経由、bk1で本を4冊注文した。たまたま、24時間以内発送可のものばかりだった。入力を終えて注文確認メールが届いたのが14:47、発送完了メールが届いたのが18:55、そして、今朝9:30頃、玄関チャイムが鳴った。送料無料の宅急便…

『空間管理社会』

日曜日、何もやる気がしなくて一日寝て過ごした。夕方になって熱が出ていることに気づいて、そのせいだったのかと変な意味で安心した。困ったのは月曜日の授業。朝一だと、休講の連絡のしようもなく、200人あまりの学生の怨恨と時間的ロスを考えると、恐ろし…

『私たちが住みたい都市』

山本理顕シリーズ第4弾を読んだ。むちゃくちゃ面白くて、4冊の中では一押しだ。『「51C」家族を容れるハコの戦後と現在』をバージョンアップさせた感じだ。 伊藤豊雄×鷲田清一、松山巖×上野千鶴子、八束はじめ×西川祐子、磯崎新×宮台真司、山本理顕編『徹底…

『「51C」家族を容れるハコの戦後と現在』

昨日に続いて、鈴木成文・上野千鶴子・山本理顕・布野修司・五十嵐太郎・山本喜美恵『「51C」家族を容れるハコの戦後と現在』(平凡社、2004)を読んだ。とても面白い。一人一人の発言が、次の論者によって次々要約され、塗り替えられていく展開になっている…

『建築の可能性、山本理顕的想像力』

咳がひどくて気力が衰え、惰性で山本シリーズ3冊目を読んだ。と書くと山本さんに気の毒だが。 前2冊とかなりかぶるが、北京での「建外SOHO」、天津市郊外の「伴山人家」のプロジェクトがかなり詳しく書かれているのと、主体性をめぐる問いが本書の後半を占め…

『つくりながら考える/使いながらつくる』

横須賀美術館の設計者・山本理顕+山本理顕設計工場『つくりながら考える/使いながらつくる』(TOTO出版、2003年)を読んだ。論文の資料用に読み始めたが、それをはるかに越えて、一気に読んでしまった。山本さんは、分からない、と言いながら、スタッフと…

『朝井閑右衛門』

ふっと気が抜けて、夕方届いたばかりの門倉芳枝『朝井閑右衛門 思い出すことなど』(求龍堂、2002年)を読む。横須賀の論文を書いていて、美術館をつくるきっかけになった寄贈作品の主である朝井さんの年譜を読んだ。 1978年 77歳 この9月、自宅浴室で転倒し…

『知事と補佐官』

久保孝雄『知事と補佐官 長洲神奈川県政の20年』(啓文堂、2006)を読み終わった。小説よりも面白く、電車やバスの中で延々と読み続けた。 この本を知ったきっけかは、横須賀市議会議員のフジノさんのHPの記事だ。http://www.hide-fujino.com/diary.htm(200…

再び、朝永さん

朝永振一郎『量子力学と私』(岩波文庫、1997年)を読み終わった。「滞独日記(抄)」のなまなましさもさることながら、「量子力学と私」や「物理学界四半世紀の素描」などの中の朝永さんの若い頃の回想録に、心引かれた。 朝永さんと湯川さんが旧制大学の三…